心の家路 たったひとつの冴えないやりかた

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たったひとつの冴えないやりかた
飲まないアルコール中毒者のドライドランクな日常
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2011年03月16日(水) 今の僕らにできることは

水曜日、さっそく東証が反発しています。
2月半ばから仕事の中国案件が急に忙しくなり、休日出勤や出張が続いて張りつめた気持ちでいました。昨日でそれがちょっと一段落し、緊張の糸が切れてちょっとぐったりしています(でも案件はまだ片づいていない)。その間、アディクション関係でも週末忙しかったり、風邪を引いたり。そして世間では大地震があり、原発がトラブルを起こし、仙台や福島の友人知人の無事が分かってほっとしたりでした。

ガソリンスタンドでは給油規制が敷かれていて、「千円まで」と言われれば6リットルぐらいしか入れることができません。僕は勤務地が近いから良いですが、遠距離を通っている人は通勤用の燃料を確保するのに苦労しています。ガソリンの需給バランスが取れるにはまだ一週間ほどかかるとか。

スーパーやコンビニでは空の棚が目立ち、本屋が雑誌を持ってこないとコンビニのおばちゃんが嘆いていました。ニュースに言われるほど皆がパニックになって買いだめ・買い占めに走っているわけではないのでしょう。不景気もあって、流通段階での無駄な在庫をそぎ落としていた結果、少し需給バランスが崩れただけで、あっという間に店頭在庫がなくなってしまったのだと思います。それでも便乗値上げのトラブルが少ないのが日本人の善良さを示しています。

東京電力の計画停電は、初日こそ混乱が大きかったものの、軌道に乗りつつあるようです。すると関心はこれがいつまで続くかに移ります。発表では4月末までとなっていますが、今後どうなるのか。

止まっている火力発電所のうち、約半数は1〜2週間で再稼働できるそうです。これで400万キロワットが上積みされます。さらに4月末までに残りのすべて(350万キロワット)も再稼働する予定。老朽化して休眠している(たぶん規模は小さい)発電所も再稼働。計画停電が4月末までの予定はこれが根拠か。

水力発電所は、福島県内15カ所など合計22発電所が止まりましたが、それの再稼働状況はよくわかりません。2007年に無許可で取水していたことがバレて取水禁止になっていた塩川発電所を使う許可が出ています(90万KW)。また、このほか4カ所の発電所で取水を増やして発電量を増加させる許可が出ています。この中にはJRの信濃川発電所も含まれますが、ここも2008年に無許可取水がバレて、翌年から2年ほど使えない時期があったところです。

関西電力では木曽川で二つの(小さな)水力発電所を60Hzに転換し東電へ送電する準備を始めたとか。

こうやってちまちま積み上げても、夏場には2000万KWも不足します。これはすぐには解消できそうにありません。計画停電が年単位で続き、日本経済の足を引っ張らないとも限りません。福島のサイトで起こっていることを考えれば、原子力発電に対する拒否感はますます強まるでしょうが、生活を考えれば止まっている原発の再稼働や新設という話にいずれはなっていくでしょう。

さて話は変わり、阪神大震災の時には関西のAAメンバーが神戸に入ってAAミーティングを開き、その合間にはボランティアに従事した、という美談が残されています。今回の大地震でも、関東のAAメンバーの中には仙台に行ってミーティングを開こうという話が出てきています。

こういう話を聞くと、ちょっと「うらやましさ」を感じてしまいます。テレビ画面には被災地の惨状が映し出されています。それを見ても僕らにはどうすることもできません。個人的に物資を送りたくても被災地向けに荷物を送ることはできず、せいぜい義援金の募金をするくらいか。異常事態の興奮が次第に冷めてくれば、心の中に残るのは無力感ばかりです。

こんなときに直接現地に乗り込んで活躍する話は、その無力感を突き破る超人的な幻想を僕らに与えてくれます(そしてそれこそアル中の求めるものです)。圧倒的な力(この場合は自然災害)によって、力の及ばなさを思い知らされると、人は自己効力感をなんとか取り戻そうとあがくものです。災害が起きるたびにたくさんのボランティアの人が現地に向かうのは、その健全な現れです。

しかし、そうして行動を起こせる人たちは、いわば「余裕のある人」です。皆がそのように恵まれているとは限りません。僕のようにカツカツで暮らしている者には、そうした日常逸脱行為は許されていません。だからこそ、その行動に対して「うらやましさ」そして若干の「うらめしさ」を感じてしまいます。

とはいえ、そんな僕にも着実にできることがあります。災害や国難に対して何もできなくても、いま自分が置かれた状況の中で、目の前に置かれた物事をこなす日常を着実に進めていくことです。それこそが僕のいるべき場所、僕のやるべきことです。

自分のことをしっかりやっていれば、残りのことは世界をコントロールしている神様がなんとかしてくれる・・だから安心して目の前のことに取り組める。それこそが信仰の証(あかし)です。

福島の原子力発電所は困難な状態からなかなか抜け出せないでいます。数百人が交代で現場に入って作業しています。(確かめてはいませんが)その多くは東京電力という恵まれた上場企業の社員ではなく、関連会社・協力会社と呼ばれる中小企業の人たちでしょう。事後に十分な補償があるかも不明確な中、彼らは文字通り「命を張って」作業に当たっています。そんな彼らのがんばりのためにも、ぜひなんとか、なんとか、事態が収拾してほしいと願っています。


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by アル中のひいらぎ |MAILHomePage


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