心の家路 たったひとつの冴えないやりかた

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たったひとつの冴えないやりかた
飲まないアルコール中毒者のドライドランクな日常
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2010年11月24日(水) 現世利益

「AAにいる私たちは霊的原理に従っている。最初はやむを得ず、そして最終的にはそれに従うことによってもたらされる生きかたが好きだから従っている」(12&12 p.237)

12ステップは酒をやめるためにやるものです。しかしそれだけでなく、副次的にいろいろな効果をもたらします。ある人は、ステップをやった結果、奥さんとのセックスレスが解消したとうれしげに報告してくれました。また別の人は家族と別居状態だったのですが、戻ってきてくれと奥さんに頼まれたそうです。どちらも自己評価は上がりまくりで、「ステップやって良かった」という感想になるのもうなづけます。仕事でプラスに評価されるようになったとか、就職できたという話はいくらでも聞きます。

そうした即物的な報酬をあてにしてステップをやるのは間違っている、という意見もあるでしょう。確かにそのとおり。もしこの人たちがセックスレスの解消や、家族との同居を目指してステップをやったとしたら、このような結果に結びついたかどうかは疑問です。あくまで回復という本来の目的のためにステップをやった結果でしょう。

けれどステップをやっていると、しばしば現実的な成果を手にします。つまり、僕らの抱える「性格的欠点」というやつは、それほどまでに僕らが成果を手にするのを邪魔していたというわけです。だからそれが少しでも取り除かれたときに、僕らは成果を手に入れられるようになってきます。

努力に対して報酬が与えられると、人は努力を続ける動機(やる気)を得ます。そうしたフロー効果が起きているときは、ステップに対する理解やハイヤーパワーへの信頼は急速に深まっていくようです。

もちろん、成果を与えるかどうかは神さまが決めることですから、結果が出なくても自分の努力不足だと嘆く必要はないのでしょう。けれど、一生懸命やっているのに成果に乏しいときは、自分の方向性を見直してみたほうがいいかもしれません。

もちろんビッグブックには、ステップをやれば金持ちになれるとか、素晴らしい伴侶を手にできるとか、良い仕事に就けるとは書いてありません。酒がやめられると書いてあるだけです。けれど、その他にあんな良いことや、こんな良いこともあったという記述が、ビッグブック全体に散りばめられています。そこをあえて読み飛ばす必要はありません。

何の報酬も得られないのに努力を続けられる人はいません。「見返りを求めずに奉仕」と言ったって、それ以上のものが与えられるからこそ、即物的な見返りを期待しないだけの話です。

僕らは生活に便利な家電製品を手に入れると、「これは役に立つから気に入った」と思い、それが生活に必要なものだと思います。ステップも同じことです。ビル・Wは霊的であるということは、現実的であることだと言っています。

ステップによって僕らは利益を得ます。それは来世の利益ではなく、今この人生にもたらされる現世利益です。何よりも酒がとまるのです。アル中にとってこれ以上の現世利益があるでしょうか?


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by アル中のひいらぎ |MAILHomePage


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