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たったひとつの冴えないやりかた
飲まないアルコール中毒者のドライドランクな日常
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2010年03月02日(火) 抗うつ薬の作用機序の続き 抗うつ薬がなぜ効くか、という話は以下に書きました。
ダウンレギュレーション
http://www.enpitu.ne.jp/usr1/bin/day?id=19200&pg=20091117
ネガティブな認知バイアスの解除
http://www.enpitu.ne.jp/usr1/bin/day?id=19200&pg=20091118
残念ながら元ネタにしたDr.KOBAのブログが閉鎖されたため、元の論文をたどれませんが、たどったところでabstructしか読めないのであまり意味はありません。
抗うつ剤はシナプス間隙に放出されたモノアミン(セロトニン)の再吸収を阻害するため、セロトニン濃度が上昇します。これによってうつが良くなるのだと考えられています。しかし、セロトニン濃度は抗うつ薬を飲んだ直後から上昇するのに対し、うつの症状の改善には2週間〜6週間もかかり、この時間差が謎になっています。
これについて、濃度が上昇するため受容体の数が減少する(=ダウンレギュレーション)ためであるという説を紹介しました。これは素直に読むと、セロトニンに対する感受性が下がることに効果があるわけです。
一方で、抗うつ薬を飲み始めた直後から、物事をネガティブに捉える認知バイアスが解除されていることが観察され、その効果が発揮されるまでに時間差があるのだろう、という説を紹介しました。こちらも素直に読めば、抗うつ薬の作用機序は、カウンセリングによる認知行動療法と同じで、(内分泌のレベルではなく)認知のレベルの改善によるものだ、というわけです。
ところがSSRIでは受容体の減少が起きないため、ダウンレギュレーションが一般的な作用機序とはみなされない、という説がでています。
人間の脳は大人になってしまうと神経の再生は行われず、ただ死滅して徐々に減っていくのみと考えられていました。しかし、記憶をつかさどっている海馬では、その一部で神経細胞の新生が続いていることが分かってきました。(この神経新生は加齢とともに減っていくので、これが加齢による記憶力の低下の原因かも)。
うつ病の人の脳では、この神経再生に必要なBDNF(脳由来神経栄養因子)の濃度が減っていることが分かっています。これにより海馬神経新生が阻害されることがうつの原因だという考え方があります。抗うつ薬の服用によってBDNFの濃度はすぐに戻るものの、神経新生が進んで海馬が機能を取り戻すまでには数週間かかる、という説です。
コルチコイドというのは人がストレスを感じたときに分泌される「抗ストレスホルモン」ですが、これが海馬におけるBDNFの濃度を低下させ、海馬の再生を阻害します。海馬はコルチコイドの濃度にも関わっているので、海馬が傷害されコルチコイドの濃度が上昇すると、さらに海馬が傷害されることになります。
うつ病患者の脳では海馬が萎縮しているとされますが、ストレスによって海馬が自分を傷つける悪循環を、抗うつ薬が逆転させる、という話になるわけです。そうなると、うつ病も器質性の病気ということになります。
今世紀になって統合失調症の脳に萎縮があることがわかってきました。うつ病や統合失調症は内因性の病気とされてきました。統合失調はドーパミン、うつ病はセロトニンの内分泌系の異常であって、アルツハイマーのような脳の組織変性は起きていないと考えられていたわけです。けれどやっぱり器質の問題だったのかも知れません。
21世紀は器質の時代か・・・。
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