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たったひとつの冴えないやりかた
飲まないアルコール中毒者のドライドランクな日常
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2010年01月15日(金) 発達障害について(その10) では少し脇道にそれて、AAに来たアスペルガーの人に対して、こちらはどんな対応ができるか、アイデアだけでも書いてみます。
例えば、接触を嫌がること。
グループによっては、握手やハグをしているところもありますが、アスペルガーの人にはこれが大きな心理的負担になることを考えるべきだと思います。
自分の話に夢中になりがちなことを考えると、ミーティングでの分かち合いを一人最大何分までと決めておいてもいいでしょう。アスペルガーの人はハッキリとしたルールを守るのは得意なので、時間が来たら終わりにするのであれば、話の途中で止めても感情が傷つかずにすむと思われます。
臨機応変が苦手ということを考えてみます。
ミーティングでは分かち合いのトピックス(テーマ)を決めることがありますが、そのトピックスはミーティングが始まってから司会者から提示されるのがほとんどだと思います。多くの人にとって、これは負担にはなりません。最初に話をする人はちょっと大変ですが、人の話を聞きながら、自分の番が来たら何を話すか考えておけばいいわけですから。
しかしアスペルガーの人が「二つのことを同時にこなすのが苦手」だということを思い出してください。「人の話を聞く」、「自分の番で話すことを考える」というのは別のことですから、これを同時にこなすのが難しいでしょう。結果として彼らはミーティングで自分の話をするのが苦手になりかねません。
そこで、ミーティングのトピックス(テーマ)は一週間前などにあらかじめ決めておき、何を話すか事前に考えてきてもらいます。また、書面に書いてきたものを読み上げるのもオーケーということにします。予定通り物事を進めるのは得意なのですから。(自閉症グループ全体に、話すことより書くことが得意と言える)。
この「事前に分かち合いのテーマを出しておく」「書面を読むのもオーケー」という対応を、ギャンブルの施設での発達障害クローズドのミーティングで試してうまくいっているという話が紹介されていました。
こうして考えてみると、とりあえず必要なこと、できることは、発達障害の人のダブル・クローズドのミーティングではないかと思います。ミーティングの数が少ない田舎では難しいでしょうが、都市部ではダブル・クローズドを開催する余地もあるでしょう。
そして、発達障害の人をそうしたダブル・クローズドにうまく誘導できるような周知も必要になってくるのでしょう。
発達障害においては「人間性を直そうとせず受け入れる」ことが大事だとされます。しかしそれは、とりもなおさず、周りの人に対してその人のやり方に合わせる負担を強いることにもつながります。例えば上に書いたようなことを、すべてのAAミーティングで実施しようとすれば、きっと大騒ぎになるでしょう。
だからといって発達障害の人をダブル・クローズドに隔離する発想になってはいけませんが、彼らが回復できる場所を担保するためにも、そうした会場が必ず必要なはずです。
またビッグブックを読んでみると、たくさんの慣用句や修辞がちりばめられています。しかし、それに気を取られてしまうアスペルガーの人たちを考えると、「足をなくした人」に例えるような修辞を一切廃し、直球勝負の文章だけ(しかも平易な言葉)だけで編集されたテキストがあっても良いと思います。
基本テキストは安易に改変しないという合意がAAの中にありますし、著作権によっても守られています。けれど視覚障害者のためにオーディオCDを作ったり、弱視の人のために大判の印刷を作ったわけです。そうした対応をもう一歩進めて、発達障害の人のためにシンプル版のビッグブックというものを作っても良いのではないか、と思うのです。
僕は以前から、ビッグブックを総ルビにすべきだという話をしています。漢字に全部ふりがなをふるわけです。これですら実現しないのですから、文章そのものを改変したものを作るとなると簡単ではないのは確かでしょうけど。
障壁を越える、というのは何も文化や言語に限らないと思うのです。
(つづく)
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