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たったひとつの冴えないやりかた
飲まないアルコール中毒者のドライドランクな日常
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2010年01月10日(日) 発達障害について(その8) 自閉症グループには、ウィングの三症状があります。
・社会性の障害
・言語とコミュニケーションの障害
・想像力の障害とそれに基づく行動の傷害
このうち言語とコミュニケーションの障害が軽微なのが「アスペルガー症候群」です。
幼児期は、母親と視線を合わせない、呼ばれても応えない、母親が去っても後追い行動をしない、興味のあるものに向かってしまい迷子になる、などカナー自閉症と同様です(愛着の障害)。
知覚過敏があるのは4割ほどですが、やはり痛いのでシャワーが浴びられない、触られることを嫌がるということもあるようです。明らかな言語の遅れはないところがカナー自閉症と違っています(遅れがある場合は高機能自閉症)。
社会性や想像力の障害は、幼稚園保育園や小学校に入ると目立ってきます。場の雰囲気や人の気持ちを読み取ることが不得手なので、ともかく集団行動が苦手になります。
授業では落ち着いて椅子に座っていられない、先生の話を聞いていない、他の子にちょっかいを出すなど勝手なことをする、興味のない授業では床に寝そべったり外へ飛び出していってしまう・・などという授業妨害をして嫌われる原因となります。
さらに、(ルールを守ることには真面目なのですが)遊びやスポーツのルールがなかなか憶えられないこと、他の子の動きや状況に合わせて判断することが難しく、また体を動かすことが生来苦手(運動音痴)なこともあって、集団による遊びやスポーツが苦手です。
このような授業中に落ち着いていられない、集団で人と同じことが出来ないという学童期の記述だけを見ると、「おや、これはADHD(注意欠損多動症)のことではないのか?」と思った人もいるかもしれません。脇道に逸れますが、それについて少し書きます。
日本の教育分野では、まずLD(学習障害)が注目されました。LDとは読む・書く・計算するという能力に問題を抱え学習が進まない障害です。
これとは別に、能力に問題がない(医学的な意味では学習障害ではない)のに、授業中に落ち着いていられないために学習に取り組めない多動児が増えてきていることが問題となりました。これによりADHDが注目されました。
ADHDへの対応が進んでいくと、これはリタリンという薬が効くことが分かってきました。薬に加えて適切な対応をすることにより不注意や多動の問題がおさまり、学習の遅れは児童期に取りもどせ、(二次障害や虐待などの背景がなければ)青年期を過ぎれば困った問題はあまりなくなってしまいます。これによりADHDに限って言えば、なにも児童精神科医が出てこなくても、町の小児科医で十分対応出来ることがわかってきたのです。
となると、薬があまり効かなかったり、大人になっても問題を抱えているADHDの人は何なのか。子供のころに虐待を受けた可能性がまず一つ。そして、ADHDではなくアスペルガーが誤診されたという可能性です。ADHDとアスペルガーでは対応の枠組みが違うので、誤診があると正しい対応が出来なくなってしまいます。
このように、専門家の注目がLD→ADHD→アスペルガーと広がってきているため、過去にLDもしくはADHDという診断を受けていても、実はアスペルガーという可能性を疑ってみなければなりません。
ADHDもアスペルガーも「場にそぐわない行動」を取る点は同じです(例えば興味のない授業だと外へ出て行ってしまう)。しかしADHDでは怒りや好奇心によって生まれた衝動を制御できず「何が正しい行動か分かっていても、それができない」のに対し、アスペルガーでは社会性や想像力の障害があるために「何が正しい行動か分からずそぐわない行動をとってしまう」という違いがあります。
また対人関係では、ADHDは人なつこく、人にからかわれることも基本的に好みますが、アスペルガーの場合には孤立を好み、からかわれることを嫌います。積極的に人に関わるにしても、あくまでも自分中心的な関わり方となります。
(つづく)
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