ホーム > 日々雑記 「たったひとつの冴えないやりかた」
たったひとつの冴えないやりかた
飲まないアルコール中毒者のドライドランクな日常
もくじ|過去へ|未来へ
2010年01月05日(火) 発達障害について(その4) さて話は、知的障害から広汎性発達障害(自閉症スペクトラム)に移ります。
広汎性発達障害(PDD)には、旧来の自閉症(カナー自閉症)、アスペルガー症候群、レット障害、小児崩壊性障害、非定型自閉症(PDDNOS)の5つが含まれます。これが一つのくくりになっているのは、以下の三つの基本症状がどれにも共通して存在するからです。
・社会性の障害
・言語とコミュニケーションの障害
・想像力の障害と、それに基づく行動の傷害
この三つの症状は知的なハンディキャップについて何も述べていません。PDDであっても知的障害を伴わない人たちがいるわけで、IQ70以上を「高機能広汎性発達障害」と呼びます。アスペルガーがその典型です。その多くは既述の通り境界知能ですが、中には高いIQを示す人もいます。しかしIQが高いながらも、言語理解に対する得点が低くなるのが特徴です(つまり頭は良くても言語の障害がある)。
いろいろと話を広げる前に、まずカナーの自閉症から始めます。
赤ちゃんに近づくと、赤ちゃんはじっとこちらを見つめるので、お互い視線が合います。お母さんの顔を見れば微笑み、お母さんが離れると後を追おうとします(後追い行動)。自閉症児の場合、こうした愛着行動がずいぶん遅れ、歩けるようになると興味の対象(換気扇など)に向かって勝手に走ってしまうので簡単に迷子になってしまいます。
人と感情を共有することが苦手なのがPDD全体の特徴で、自閉症児ではお母さんと一緒に何かを見てきゃっきゃっと笑うことが少なく、かわりに自分の興味に没頭します。(人に興味がないと言われる)。
杉山先生の本を読むと、自閉症の社会的障害は「自分の体験と人の体験が重なり合う前提が成り立たない」とまとめてあります。引き合いに出されているのが「逆転バイバイ」です。
普通の赤ちゃんは0才の後半になると、大人のまねをして「バイバイ」と手を振ってくれます。このとき赤ちゃんの手のひらは、こちらを向いていますから、赤ちゃんには自分の手の甲が見えているはずです。
自閉症の子供もバイバイをするようになるますが、このとき自分に手のひらを向けてバイバイとやります。これが逆転バイバイです。大人がしてくれるバイバイをそのまま再現してしまうのです。
では普通の赤ちゃんは、なぜ相手に手のひらを向けてバイバイができるのか。それは自分の体験と人の体験が重なるという前提があるために、相手からどう見えるかが論理を使って考えなくても分かるからです。しかし自閉症の場合にはここに障害があるため、見たものを視覚的にそのまま再現するわけです。
健常な子供が1才前後で言葉を発し始めるのに対し、自閉症児ではこれが遅れます(アスペルガーの場合には遅れない)。言葉が出始めるとオウム返しをします。お母さんが「ジュースが欲しいの?」と聞くと、「ジュースが欲しいの?」と疑問文で返します。そっくりコピーしてしまうところは前述の逆転バイバイと同じです。つまり、自閉症の言語の障害には、社会性の障害が乗っかっています。
このほか偏食やこだわり行動、目の前で手を振るなどの自己刺激行動、トイレや服の身辺自立の困難、眠らないなどで、お母さんが子育てに悩み、「病気かも」と思って受診して自閉症の診断が行われることが多いようです。
(もちろん続く)
もくじ|過去へ|未来へ