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たったひとつの冴えないやりかた
飲まないアルコール中毒者のドライドランクな日常
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2009年12月29日(火) 発達障害について(その3) 知能指数と学業成績は比例するのか?
知能指数に比べて学業成績が良い人を over achiver、悪い人を under achiver と呼びますが、この用語自体が、知能指数と学業成績の間に正の相関があることを示しています。
さて前回、IQ70未満を知的障害、その中で適応障害(社会障害)を起こす人が精神遅滞という話でした。その上のIQ85〜70を正常知能と知的障害の境界という意味で、境界知能と呼びます。おそらく正規分布から計算した数字でしょうが、約14%の人がここに入るとされています。
前回は、知能そのものが不適合の原因になるわけではない、という話でしたが、境界知能についてもそれは同じで、知能が境界域でも、大学を出て働いている、という人だって珍しくないはずです。境界知能でも(というかおそらく他の発達障害でも)問題になるのは、情緒的なこじれ、被害的な対人関係です。
「お前はこんなことも分からないのか」と親に責められながら、勉強を強いられる。努力を続けても成果が上がらない、常に人に後れを取る、となると、人間は豊かな情緒を発達させることが難しいようです。出来の良い他のきょうだいと比較され続けるのも同様です。「どうせ僕のことなんか誰も認めてくれないんだ」という極度の自信喪失の状態に陥るのもうなずける話です。
小学校教師の力量も大いに関係するそうで、良い教師にあたって9才の壁を乗り越えられた子は、やがて他の子に追いついて正常知能に達し、スーパー教師に恵まれなかった子は次第に後れを取って、やがて知的障害のレベルへと下がっていく。これがごく単純化されたモデルです。今始まっている特殊支援教育によって、学習の遅れが目立つ子への個別対応が可能になれば、解消していくことなのかもしれません。
つまり知能というのは固定的なものではなく、適切な補いによって発達させることが可能なわけです。
境界知能が注目されているのは、虐待を受けた子のほとんどが境界知能に属すること、それから非行の子も同じく知能が境界域になることです。それから、アスペルガーなど知的障害を伴わない軽度発達障害が注目されていて、その中でも境界知能が多いからです。
そもそも知能とは、様々な能力の組み合わせです。それぞれが数値化されたものを、強引に一つのIQという数字にまとめています。境界域の知能では、個々の能力がバランス良く低いのではなく、能力によってばらつきが大きい(発達に凹凸がある)ことがわかっています。つまり何か苦手な能力があるために、それに引きずられて全体の能力が下がっているということです。
虐待と境界知能の問題を、ものすごく単純にモデル化すれば、こんなふうかもしれません。
まず何か軽度の発達障害を抱えた子がいて、こういう子には育てにくさ(身辺自立が遅れる、親の言うことを聞かないなど)があり、それを補おうとした厳しいしつけがやがて虐待に発達して境界知能の原因となり、児童期には反抗挑戦性障害、思春期には不登校、非行を現し、成人後は何らかの適応障害(ひきこもり・アルコールや薬物の依存症・反社会性人格障害や境界例人格障害など)となり、子をなすとそれを虐待する、そんな構図ではないでしょうか。
戦後日本では、ほぼ一貫してアルコールの消費量が増えています。消費量が増えればアル中も増え、アル中の家には虐待がつきものと指摘されていますから、この悪循環に引きずり込まれていった家族も増えているのでしょう。
そう言う意味では、「どこかで誰かがちゃんと対応していれば、こうはならなかったはずなのに」という情緒的こじれを抱えた人たちが、依存症の問題を抱えて続々と自助グループにやってきているのが現状ではないでしょうか。抱えている問題それぞれは(例えば虐待の深刻さとか)は重篤でなくても、それぞれが掛け算で響いてくるだけに難しいわけです。そして自助グループでも方向が変わらなかった人たちが、着実に次の世代を生み出していく。陰惨な図です。
面倒ごとを押しつけてきやがって、という恨み節が出てこなくもありません。
農林業など第一次産業では状況判断がゆっくりで良いし、製造業など第二次産業でもわりと定型業務が多いものです。ところがサービス業(第三次産業)では、ハンバーガー屋やコンビニのアルバイト店員にまで短時間の状況判断能力が求められます。そうした産業界の需要に応えるために、学校や親が成績(間接的には知能)に振り回され、子供がみじめな思いをするはめになっています。
社会が高度化し豊かになって、ある種の障害者には助けが多くなって暮らしやすくなったと言えます。けれど一方では、社会の変化によって障害が顕わになり、苦労を強いられた人たちも生まれてきたわけです。
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