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たったひとつの冴えないやりかた
飲まないアルコール中毒者のドライドランクな日常
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2009年12月06日(日) mil 原点回帰運動について(その9) 最後にビッグブック・ムーブメントの他の団体への広がりについて。
僕自身は地元のACグループに出席したことがあるぐらいで、AA以外のグループの歴史も現状もわかりません。なので、これは伝聞情報です。
最近でこそNAでベーシックテキストが訳出され、OAではステップと伝統の本が、ACAでは「ACのための12ステップ」やアダルト・チルドレン・ビッグブック(ACBB)が出版されていますが、それまではミーティングでもスポンサーシップの中でも積極的に本を使っていくという話は聞きませんでした。
12ステップは、それを通じてハイヤーパワーとの関係を作っていくことが回復の基盤になるのですが、日本のAAでその部分が希薄になっていったのと同じ現象が、他のグループでも発生していたと考えられます。たとえば、このサイトに収録している新聞記事では日米のGAを取材してその違いに触れています。
http://www.ieji.org/archive/newspaper-clipping/ga-01-asahi.html
アメリカのGAでは「神の意志を理解し、自分の卑小さを確認することから始まる」のに対し、日本のGAでは自分の体験を語り、人の体験を聞くことで、人生のストーリーを再構築するとなっています。この外部からの視点を、自助グループ側の視点にてんかんすると、スピリチュアリティが重視されている状態と、仲間意識が重視されている状態の対比と言えないでしょうか。
日本のAAが、他の12ステップグループの成長の見本にならなかった、ということはよく言われることです。12ステップはAAが発祥だと聞き、ステップの話を聞こうとAAのオープンスピーカーズに行ったものの、そこでステップの話はほんの少ししか聞くことができなかった、という体験は少なからずあちこちから伝えられました。(オープンミーティングやオープンスピーカーズでステップの話をするべきか、というのは置くとして)。
また、援助職の人が生のAAの姿を知りたくてAAに行ってみたものの、本に書かれたことと現実があまりに違って驚いた、という話も実は珍しくありません。
12ステップの本質を「パワーゲームから降りること」と解釈し、必要なのは神を含む12ステップそのものではないとして10ステップを作ったり、「自己内部からの批判的な声に耳を傾けない」というグループ文化を作った麻布の先生の影響が、12ステップグループに及んでいました。
それぞれのグループが、始まりからしてステップが曖昧だったのか、AAと同じようなステップの希薄化が起きたのか、あるいは地理的な広がりによってステップの伝達が妨げられたのか。事情はそれぞれでも改めてステップを求める人たちと、AA内部のビッグブック・ムーブメントが相互につながるのは時間の問題でした。
BBF(ビッグブック・ファミリー)は、回復のプログラムとしてAAのビッグブックを使うグループとしてスタートしました。対象はアルコールや薬物依存者の家族の人たちです。このグループは結局アラノンに合流することを選んだのですが、現在でもBBFとしての活動も行っているようです。
秀眉はギャマノンで、基本テキストを持たなかったギャマノンのなかでビッグブックのステップのやり方が広がり、それが本人達のグループであるGAのメンバーに広がっていきました。同じ回復のプログラム、同じ価値観はGAとギャマノンの関係を(本人のグループと家族のグループとして)理想的なものとしている、と評する人もいます。
各グループでは、ビッグブックを読み合わせるときに、「アルコール」をそれぞれの依存対象に、「アルコホーリク」を自分たちの呼称に置き換えて読むのだそうです。例えば医師の意見をそう置き換えて読むことで、身体的アレルギーと精神的とらわれのモデルが自分の問題にもあてはまることを確認します。
ジョー・Mの功績を日本に紹介することを目的とした「回復研究会」には、各グループから横断的にメンバーが参加していますが、AA・NA・EA・GA・ギャマノンメンバーの姿を見ることができます。個人的には、AA以外のグループでビッグブックが回復のテキストとして使われるのは、それぞれのグループの基本テキストが有効に機能し始めるまでの限られた期間ではないか、と思っています。
ともあれ、現在日本の12ステップグループの中で「並列的に」ステップの(再)獲得運動が起きていることは間違いありません。たまたまAAのビッグブックがその手段として使われているために、ビッグブックの存在が目立っているのですが、焦点はあくまで12ステップそのものであることは強調しておきたいところです。
ステップを伝える「パケット」としてのビッグブックや、ジョー・Mについて、あるいは回復研究会についても書こうと思っていたのですが、長くなりそうなのでそれはまた別の機会にして、とりあえずこの文章はこれで終わりにします。
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