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たったひとつの冴えないやりかた
飲まないアルコール中毒者のドライドランクな日常
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2009年10月27日(火) アル中になりやすい人・なりにくい人 依存物質にはそれぞれ、毒性の強さとは別に、依存のなりやすさの違いがあります。
私たちはコーヒーや紅茶やコーラからカフェインを日常的に摂っていますが、カフェイン依存症になる人はわずかです。カフェインは依存になりにくいのです。一方、タバコを習慣的に吸う人はほぼ全員がニコチン依存になります。ニコチンはきわめて依存になりやすい物質です。アルコールは中間で、習慣的に酒を飲む人の中で依存になる人は約一割とされています(この数字はアメリカの話なので、日本ではもっと少ないかも)。
では、アルコール依存になる人・ならない人の違いは何か?
慢性アルコール中毒が病気だと考えられるようになる前は、酒に溺れるのは不道徳の証だと思われていました。そのころでも「酩酊という不道徳は遺伝する」ことが知られていました。つまり、アル中の子供はアル中になりやすいのです。これは、アルコール依存症に遺伝性があることを示しています。
ただ間違えてはいけないのは、遺伝するのは「病気になりやすい体質」で病気そのものではありません。血友病みたいな遺伝病とは違って、アル中は予防が可能です。酒を飲むから依存症になるのですから、飲まなければ予防できます。
つまり、親がアルコール依存症の人は酒を飲まない方が良いし、自分が依存症本人だという人は子供が成人しても酒を飲まないように教育すべきです。そうすればアルコール依存症は予防できます(他の依存症になる可能性は残りますが)。酒が飲めないのは不憫な気もしますが、どうせ依存症になれば飲めなくなるのですから、最初から飲めない方が苦労が無くてすみます。
遺伝の要素以外に、ストレス耐性という要素が言われています。
それは 1950年に書かれたこの文章 にも書かれていますが、将来アル中になる人は酒を飲むことで「際だった解放感」を得ます。つまり普通の人より「酔いの快感」が大きいと考えられています。人より気持ちいいので、人よりハマりやすいわけです。
酒が好きだから依存症になったという人もいますが、人より酒の快感が強かったので快感物質にハマってしまっただけの話で、その点では覚醒剤でラリっているのりピーと大差ありません。
では、なぜ「人より強く解放感を感じるか」。前の文章によれば、その人の受けているストレスが
「その社会のほかの人々よりはるかに強いか、あるいは彼が、ほかの人たちのようにその緊張をうまく調節する方法を学んでいないか、どちらかの理由による」
というわけです。しかし前者(他の人より強いストレスのせいで依存症になった)という人はまずいないと思います。例えば仕事のストレスが依存症の原因だ主張する人がいますが、ストレスになるほどの激務を毎日大酒を飲みながらこなせるわけがありません。
つまり、ほとんどは後者。ストレスの量は社会の他の人と変わらないものの、ストレスに弱いか、ストレス解消が下手だったわけです。そこへ酒を飲んだら大きな解放感を味わったので、病気になるほどハマってしまったというわけです。
重大なことを目の前にしても、人と夕食を楽しんで熟睡できる人がいます。当然こういう人はストレスに強い。一方、大したことでないのに心配して眠れなくなり、騒がなくてもいいことを騒ぐ人もいます。ストレスに弱く、アル中にもなりやすい人と言えます。
断酒する人の中には、酒に変わる楽しみが欲しいという人もいます。けれど、アル中さんの酒の快感は普通の人より強いのですから、酒より気持ちいいことなんて、そうそう見つかりません。ストレス解消の手段を追求するよりも、なぜ自分は人よりストレスに弱いのか、そのことに取り組むべきなのです。
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