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たったひとつの冴えないやりかた
飲まないアルコール中毒者のドライドランクな日常
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2009年10月17日(土) 非定型うつ病について追加(その2) 日本ではメランコリー型のうつ病も非定型うつ病も区別されない、それはなぜかという話で、非定型に効果のある薬が使えないので区別する必要がないという理由を挙げました。
もう一つの理由は診断基準にあると思います。
メランコリー型・非定型という名前は、DSMに載っているのですが、どちらも「大うつ病」というくくりの中にあります。DSMは病気の原因よりも症状を重視します。原因を探るのは難しい、けれどマニュアルに基づいて症状を観察すれば、客観的基準で診断が下せる、これがアメリカ人の考える合理性なんでしょう。その結果、原因が違っていても抑うつ症状が出ていればうつ病と診断されることになりました。(とはいえ、メランコリー型と非定型の間には、かなり症状の違いがありますが)。
神経症という大きな概念があります。外部のストレス因子で具合が悪くなっているという考え方です。アル中旦那の飲酒(断酒後のドライドランク)のせいで奥さんの具合が悪くなっているのなら、ストレス因子=旦那です。旦那が2〜3ヶ月入院で留守の間は奥さんが元気になるなら、どんぴしゃです。
DSMには神経症という概念がありませんので、この場合なら「適応障害」という病名でしょうかね。(飲んでいようがやめていようが)アル中の配偶者に適応障害のひとは多いはずですが、実際は「うつ」という病名をもらっている人が多いのじゃないでしょうか。こういう人がうつの治療をしても良くならないのは不思議でもなんでもありません。それが離婚の段取りがついたらとたんに改善したりします。
神経症は(診断の)ゴミ箱と言われたことがありました。うつや統合失調や依存症などの鮮やかな症状があるなら診断も簡単ですが、なんだかハッキリしない患者にも病名は与えねばなりません。そんな時に神経症は便利だったというわけです。
その便利なゴミ箱がなくなってしまうと、代わりのゴミ箱が必要になります。それがうつ病だったというわけでしょう。昔だったら神経症と言われた人たちが、今はうつ病と言われ(当然三環系が効かないので)SSRI/SNRIを処方されている。発達障害やら器質性の人も混じっているでしょう。
そんなゴミ箱状態のうつ病の中で、ことさらにメランコリー型・非定型の違いを取り上げて別の病気に仕立てる必要がない、というのが現場の精神科医の意見なのだと思います。
最近ネットや新聞で「非定型うつ病」が取り上げられ目立ってきていますが、実は昔ながらの?非定型の人は少ないのじゃないかと思います。うつ病ではない、つまりメランコリー型でも非定型でもない人たち。それは前述の適応障害や不安障害、気分変調症(軽度の抑うつが長く続く)であったり、林先生の擬態うつ病や、kyupin先生の器質性障害なのでしょう。そういうのをひっくるめて「非定型」と呼ぶから、さらに話はややこしくなります。
遷延性うつ病で苦労していた(いる)身としては、「それはうつじゃねーだろ」と内心ツッコミたくなる場面は多々あります。ましてやその人や家族が酒を飲んでいたとなれば、真っ先に疑うのはアルコールの影響です。
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