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たったひとつの冴えないやりかた
飲まないアルコール中毒者のドライドランクな日常
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2009年10月16日(金) 非定型うつ病について追加(その1) 非定型うつ病について以前に書きました。
7/23, 7/24, 7/25, 7/27
これを書いたときは、僕は非定型うつ病を「最近登場してきたうつ病の新ジャンル」と捉えていたのですが、それは誤りでした。非定型うつ病は実は古くから知られた病気で、しかもうつ病とは異なる病気です。
しかし現在の日本では、従来型のうつ病も非定型うつ病も区別はされていません。それはなぜか、ということを中心に、もう一度非定型うつ病について書いてみたいと思います。
元ネタはこちらで、ほかに薬について調べた情報を元に書いています。
DSMでは従来から日本でうつ病と呼んできたものを「メランコリー型」。非定型は「非定型」と呼んでいます(つまりメランコリー型が定型という意味)。
非定型うつ病はMAO阻害剤という薬が効きます。これは第一世代、つまり一番古い抗うつ薬です。
脳の中ではセロトニンやアドレナリン、ドーパミンなどの神経伝達物質(モノアミン)が活躍しています。使用済みの伝達物質はモノアミン酸化酵素(MAO)によって代謝され再利用されます。脳がうつになるのは、モノアミンの調整がうまくいかず、量が少なくなりすぎるからだと考えられています(アミン仮説)。
そこでこのMAOの働きを阻害して、伝達物質が代謝されないようにするのが「MAO阻害剤」です。そして非定型うつ病は、このMAO阻害剤が(ほかの薬や電気けいれん療法よりも)良く効く病気として、すでに1958年に紹介されました。
非定型うつ病がうつ病と似ているが違う病気とされる理由は、ひとつには前に書いたように症状が違うこと。もうひとつは、今回書いたように違う薬が効くことです。違う薬が効くから違う病気、という理屈は乱暴すぎる気がしますが、ある薬が良く効くのであれば、その薬にあった病気の仕組みがあると考えられるわけです。
MAO阻害剤は、元は結核の薬として開発され、やがてうつ病に使われるようになりました。しかし、副作用が強くて使いづらい薬だったために、どちらにも使われなくなり、現在はパーキンソン病の治療にのみ使われています(アメリカでは現在でもうつの治療にも使っている)。
というわけで、日本ではMAO阻害剤をうつの治療に使っていません。非定型うつ病をこの薬で治療した経験のある医者もいないわけです。メランコリー型も非定型も区別せずにほかの薬で治療を行っています。であれば、治療する上で別の病気として区別する必要はないわけです。
しかしメランコリー型が三環系抗うつ薬に良く反応するのに対し、非定型は薬が効かずに遷延化しやすいとされ、適切な治療を受けられていない非定型の人も多いのじゃないか、というのが個人的な考えです。
MAO阻害剤にはAタイプとBタイプがあり、うつに効くのはAタイプなのに、日本ではBタイプのセルギリンしか販売されていません(非定型にMAO阻害剤が効かないという話はここらへんが原因かも)。だから、無理に医者に頼んで処方してもらっても無駄ということでしょう。
しかし薬も進歩するもので、海外ではMAO阻害剤を改良した「可逆的モノアミン酵素タイプA阻害薬(RIMA)」という薬が使われています。
(この話続きます)。
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