心の家路 たったひとつの冴えないやりかた

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飲まないアルコール中毒者のドライドランクな日常
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2009年07月29日(水) mil この病気を何と呼ぶか(その2)

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日本では長年「慢性アルコール中毒(症)」の名前が使われてきました。これを略して「アル中」という言葉は現在でも使われています。おそらく1980年ごろからでしょう、専門家の間でWHOの提案に従って「アルコール依存(症)」という名前に変えていこうという風潮が高まり、今では新聞やテレビなどのマスメディアが使う言葉は、ほぼ「アルコール依存症」で統一されています。

「アルコール症」という言葉も一部で使われています。この言葉の発祥ははっきりしませんが、元になったアルコホリズムという言葉が、「アルコール」に病気の状態を示す「イズム」をくっつけた言葉であったため、それを直訳して生まれたものと思われます。ただ、アルコール症も、それを略した「アル症」という言葉も一般化してはいません。

新しい病名に変えることで、古い病名につきまとう偏見を取り除こうという意図は、海外でも日本でも成功したとは言えません。今では「依存」も「アル症」も人間のだらしなさというニュアンスを帯びてしまっています。世間に偏見がある以上、どんな新しい病名を使っても同じことの繰り返しでしょう。偏見を取り除くには、病名を変えるのではなく、もっとこの病気の回復率を上げていく努力が必要なのだと思います。

さて、「心の家路」ではこの病気を何と呼ぶべきか、という問題に移ります。
一般になじみのない名前を使うメリットはありません。これで、アルコホリズム、アルコール症が候補から落ちます。「中毒」と「依存」は、どちらも病気の一面しか示していない欠点がありますが、決して間違った名前ではありません。そして一般に浸透しているのは大きな利点です。

メディアがアルコール依存症という言葉を使う以上、この病気のことを知ろうとする人は「アルコール依存症」でネットを検索するでしょう。そして「心の家路」がネットで検索を受けやすくすることは大事です。なので、ここでは「アルコール依存症」という言葉をメインに使い、気楽な文章では一般に最もなじみのある「アル中」という言葉も混ぜていくことにします。

僕はAAのメンバーなので、AAの使うアルコホリズム/アルコホーリクという言葉にも未練があります。けれど、上記の理由でなるべく使わないでおこうと思います。あえて使うとすれば、(特にAAの文脈で)意味があって使っているということになります。

この病気
 アルコール依存
 アルコール依存症
 アルコール中毒
 アルコール中毒症
 (略して)アル中

この病気の人
 アルコール依存症者
 (略して)依存症者
 アルコール中毒者
 (略して)アル中

付記1:発音について
英語の alcoholism/alcoholic の発音をカタカナ表記すれば、それぞれ「アルコホリズム/アルコホーリク」となるので、ここではそのままカタカナにしています。同じ理屈で言えば alcohol は「アルコホール」と聞こえるので、そう書くべきかもしれませんが日本語のアルコールをそのまま使っています。アルコールに揃えてアルコリズム/アルコーリクにするのは変だと思うので採用していません。

alcoholic の末尾の lic は、カタカナにするときは「リック」にするのが一般的です。例えば metabolic → メタボリック、public → パブリックなど。これからすると alcoholic は「アルコホリック」、Alcoholics Anonymous(AA) はアルコホリックス・アノニマスが適当ですが、単に「日本のAAが30年以上アルコホーリクを使い続けている」という理由でアルコホーリクを採用しました。

付記2:アディクション/アディクト
アディクション(addiction)という言葉は、薬物依存(とりわけ麻薬依存)を示す言葉として使われることがありますが、このサイトでは「アルコールを含むすべての種類の依存」という意味で使います。

 アディクション→アルコールを含むすべての種類の依存症
 アディクト→アルコールを含むすべての種類の依存症の人


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by アル中のひいらぎ |MAILHomePage


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