心の家路 たったひとつの冴えないやりかた

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たったひとつの冴えないやりかた
飲まないアルコール中毒者のドライドランクな日常
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2008年02月09日(土) 餃子を作る人

家路のニュース検索に、餃子の中毒問題ばかりひっかかる状態が続いていました。
騒ぎをさらに加熱する日本のニュースメディアに業を煮やしたのか、中国の官僚が「日本はもう少しメディアを規制したらどうか」と注文をつけた、とこれまたニュースになっていました。

民主主義が機能するためには、報道メディアの存在が欠かせません。それはなるべく権力の受けないよう独立していた方が良いわけです。そうしておけばメディアは、統治機構とは独立した一種の権力を帯びます。とはいえ、報道メディアも単なる営利企業に過ぎなかったりするわけですが・・・、ともかく「独立性」というものは必要です。

アメリカでAAが始まってしばらくすると、ニューヨークに本部のオフィス(GSO)が作られ、そこへグループの献金が集まる仕組みが始まりました。AAのオフィスはサービス(奉仕)の機関であって、統治や支配をする存在ではありません。しかし、それにはある種の権威がありますし、金の集まるところに力も生まれるのは当然です。

GSOを作っていく過程とは別に、やはりニューヨーク在住のAAメンバーが「AAの雑誌」を作り始めました。これが AA Grapevine です。それが第二次大戦と同じ時期で、従軍する兵士たちの依存症問題に手を焼いていた軍が、対策としてこの雑誌を広く配ったのをきっかけとして、グレープバインはAAの雑誌としての地位を築いていきました。

オフィスがメンバーからの献金とビッグブックの売り上げで維持されたのに対し、グレープバインはその雑誌の売り上げで維持されていきました。今でもアメリカ・カナダのサービス機関は、GSOとグレープバインの二つに分かれています。

グレープバインは、AAメンバーからの投稿記事で成り立っています。どんな記事を載せるかという編集方針には、評議会と言えども(そしてオフィスも)口を挟めない仕組みになっています。決して、グレープバインがオフィスの権力(?)を監視するための報道メディアになっているわけではありません。けれど、AAメンバーの声が直接反映され、意見が広められる存在として、オフィスと独立したメディアを持つのは「民主主義の当然の知恵」でした。

日本にも「BOX-916」というAAの雑誌があります。発送やら集金やらの業務はオフィス(JSO)が行っていますが、編集部(編集委員会)はこれとは独立してボランティアのAAメンバーがやっています。そしてその編集権は「評議会といへども犯すべからず」という取り決めがあります。
輪番制とは言え一度引き受ければ2〜3年は毎月編集作業があるわけで、ボランティアの人たちは本当に大変です。だからそれは有給のオフィススタッフがやるべきだ、という意見もでています。しかし「独立した編集権」がAAの健全な民主主義の仕組みの一部であるからには、その編集権限をJSOスタッフや常任理事の人に任せるわけにはいかないのです。

まあ、民主主義なんて気にしない人達もいるみたいですが。餃子を食べながらそんなことを思ったわけです。


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by アル中のひいらぎ |MAILHomePage


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