心の家路 たったひとつの冴えないやりかた

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たったひとつの冴えないやりかた
飲まないアルコール中毒者のドライドランクな日常
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2008年01月01日(火) とめて欲しくない心境

「一杯飲む前にスポンサーに電話しよう」というスローガンがあります。
これは、酒をやめたてで、酒に手を出したくてたまらない人が、なんとか努力して酒を切っていこう、というときには有効でしょう。一人で辛いときに、一緒に乗り越えてくれる人がいれば、心強いものです。

ところが、ある程度の期間酒をやめたあとで、再び酒を飲む=スリップと呼ばれる再飲酒には、どうもこの手段は役に立たないようです。個人的な経験でも、飲んだあとに電話してきた人はいても、飲む前にかけてきた人はいません。つまり、人はその時には、もうスポンサーに電話はできないのです。

おそらく、もう飲むのをとめて欲しくない心境なのでしょう。そうなってしまっては手遅れです。「なぜ飲む前に電話しなかった」と問いつめてみても、役に立ちません。だって、飲みたいのに、スポンサーに電話してしまったら飲めないのですから、電話するわけがありません。最初の一杯を飲むのが「狂気」と言いますが、その狂気はずっと前から始まっているのです。

一緒に暮らしている家族や、同じAAグループの仲間は、「危ない状態になってきた」と気づくものです。だから、危険を避けるように本人にアドバイスをするのですが、すでに精神状態が悪くなっているので、それを素直に受け取ってはもらえません。たいていは過度の干渉と受け止め、気を悪くするだけです。表面上の従順や感謝があったとしても、じゃあアドバイスを実行に移しているかと後でチェックしてみれば、話は耳から素通りしたがごとく無視されているのが通例です。
いや、本人はそれなりに真面目に取り組んでいるつもりかも知れません。でも、必要を満たすだけの真剣さは、すでに失われています。

自分の努力が認められていないと感じたり、周り人の言葉が小うるさく感じられるときは、すでに狂気へと踏み込んでいるのです。つまり飲んでいる状態と同じドライドランクというやつです。

飲まない以上の幸せを求め始めるとドライドランクになりやすいみたいです。飲まないだけで十分幸せでなければ、何を得ても幸せにはなれっこないのです。今が不幸せなのは何かが足りないせいだと思ってしまいがちですからね。ここでも、自分以外の誰か、何かのせいにするという悪い癖が出てしまうのです。


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by アル中のひいらぎ |MAILHomePage


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