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たったひとつの冴えないやりかた
飲まないアルコール中毒者のドライドランクな日常
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2007年08月30日(木) ハイオク 熱いお風呂にはいると、最初はとても熱く感じられますが、しばらくするとあまり熱さが気にならなくなります。これは体が熱さに順応した・・・のではなく、冷えた体が周囲のお湯を冷やして、皮膚の上にぬるいお湯が薄い層を作っているのです。
この薄い層を境界層と呼びます。水には粘性があるため、境界層はなかなか破られませんが、お湯をかき混ぜると層が破れ、熱いお湯が皮膚に接するのでまた熱く感じられます。どこぞの温泉では、客が熱いお湯に我慢して入っているのに、わざわざお湯をかき混ぜるサービスをしてくれるのだとか・・。
パソコンの熱くなった部品の周囲にも、熱い空気の境界層ができて、冷却の妨げになります。イオン風によって境界層を破壊して冷やす という技術も発明されつつあるようです。
ガソリンエンジンの燃焼気は、温度が2000℃にもなります。この温度が伝わったら、金属でできているピストンやシリンダーはすぐに溶けてしまいます。ここでも金属表面に境界層ができ、それがせいぜい200℃ぐらいまでしか上がらないので、エンジンが守られています。
さて、ガソリンエンジンの性能を上げるには、圧縮比を上げるという手段があります。目一杯空気(と燃料)を圧縮してから爆発させれば、膨張するときのエネルギーは大きくなります。しかし、気化したガソリンには悪い癖があって、圧縮しすぎると、スパークプラグで点火しなくても自己着火で勝手に爆発を始めてしまいます。
スパークプラグで着火して燃焼室内を燃え広がっていく正常な燃焼と、その反対側で自己着火して広がってくる異常燃焼がぶつかると、衝撃波が発生します。この衝撃波が大変なエネルギーで・・・ってことはなくて、ただエンジンからガガガと音がするだけです。これがノッキング(ノックする)という現象です。
でも、そのぶつかり合う衝撃のおかげで、金属表面の境界層が破られ、2000℃の熱に触れたエンジンが溶け出してしまいます。お湯をかき混ぜられて、熱い熱いと言うはめになるのと同じです。
これを防ぐために、高出力(=高圧縮)のエンジンには、自己着火しにくい燃料を使います。着火しにくさをオクタン価と言い、高オクタン価=ハイオクのガソリンが売られています。ハイオクガソリンは、添加物でオクタン価を高めている分だけ、ふつうのガソリンより高価になっています。
(長くなったので続きます)。
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