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たったひとつの冴えないやりかた
飲まないアルコール中毒者のドライドランクな日常
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2007年07月12日(木) スポンサーのおもいで 人の話をするのもどうかと思いますが、まあスポンサーの話ですからね・・・。
僕のスポンサーは(最初の頃は)見た目が怖かったし、学もあんまりなさそうだったし、話し出すと長かったし、いろいろコンプレックスも感じさせたし、世間的な基準で魅力に溢れる人かどうかは、ちょっと疑問が残る人でした。
でも、人間的な魅力、あるいは愛情といいましょうか、AA的な言葉で言えば「引きつける魅力」に溢れた人でした。何でも自分でどんどんやってしまう割に、「この人ひとりじゃやってけないな、俺たちが付いてなくちゃ」と思わせるところもありましたね。イマドキの言葉で言えば、とっても「濃い」AAメンバーだったわけです。
だから、そのグループが彼を中心とした結束していたのも、当然といえましょう。彼がどんなに「謙虚にしていよう」「口を慎んでいよう」としても、周りの人間がそうはさせませんでした。彼の小さな一言が、グループメンバーの意見を大きく左右してしまいました。そのグループが、AAの魅力よりは、彼個人の魅力によって集まった人たちでできていたのですから、それ以外のありようが無かったのです。
そして、その輪の中にいる僕らも、それがそんなに大きな問題だとは思ってもいませんでした。
スポンサーにもスポンサーがいて、たびたびそのことを指摘されて悩んではいたようですが、事態はあまり変わりませんでした。ある時、事態を大きく動かす一言がグランドスポンサーから発せられました。
「お前のグループはAA○○グループじゃなくて、AA□□グループだな」
(○○はグループの正式な名前、そして□□はスポンサーのニックネームです)。
その言葉で彼は、ここにいる限り、自分がどう望んでも「元老」にはなれず「死にかけの執事」にしかなれないことを知ったのです。それは僕らが「元老」になることを許さなかったということです。そして彼は「後は任せたよ」とだけ言ってグループを出て、別の町でAAミーティングを始めました。
そのころすでに別の場所に移っていた僕には、一見不可解としか思えない彼の行動の理屈がよく分かりました。
ただの普通のAAメンバーであるにも関わらず、グループの創始者は暗黙の権威を帯びてしまうことが往々にしてあります。ある時、他県のメンバーと「グループ創始者がとどまり続けたために成長の限界に達しているグループは多い。出て行くことでしか謙虚を実践できないこともある。それは個人の回復が足りないからで、認めるのは嫌なことだが、現実を見つめなくてはならない」という分かち合いをしました。自分がいなくなっても大丈夫にするのが、最大の貢献という考えです。
僕は「ひいらぎ一派」とかスポンサーピラミッドのようなものを形作らないように、考えて気を配ってきたつもりではいます。それは僕も、権勢欲が強いタイプであり、仲間を支配することに心の痛みを感じないタイプの人間だからです。ちょっと淋しい気もしますが、それはそれで仕方ないことだと思っています。a rolling stone gathers no moss というやつですか。おかげで得られないものもあるということです。
誰かが出て行った後のグループは、ちょっとドタバタするものですが、何年か後になってみればそれが成長の契機だったということになると思います。もちろん、別のやり方もあると思いますし、それが悪いというつもりもありません。僕は単にスポンサーから受け継いだ考え方、やり方を守っているに過ぎないのであり、おそらくそれが僕にとって最善だというだけにすぎません。
そろそろ次の動きがあるのか、まあ未来のことは神様にしか分かりません。
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