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たったひとつの冴えないやりかた
飲まないアルコール中毒者のドライドランクな日常
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2007年04月12日(木) インテリは回復しない 僕がAAにつながった頃に、「インテリは回復しない」と言われました。
現在の日本でインテリという言葉が何を示すのかは曖昧ですが、少なくと原意の intelligentsiya とはかけ離れていると思います。物知りとか知識人ぐらいの意味でしょうか。今では高校卒業者の半数近くが進学して、高等教育を受けるわけですから、石を投げれば知識人に当たるぐらいなのかも知れません。
ここでは「いろいろ知識があって、理屈で考えるのが得意」ぐらいにしておきましょう。
インテリはなぜアルコール依存症から回復しないのか?
当時言われたことは「自分の頭で考えるからだ」というものでした。今の僕は「インテリは自分の理解できる理屈で理解しようとするからだ」と考えています。逆に言えば、自分に理解できないものを拒絶するのが理由でしょう。
アルコール依存症者の脳は、飲酒以外のことへの興味関心が薄くなってきます。それは脳の状態の変化から来るものです。飲むことで抑うつが強くなって、同じ思考パターンをぐるぐるくり返すようになります。結果として、いろんな要素を公平に考えることや、自分の考えが間違っていないか点検することができなくなるので、自力で自分の考えを変える能力がなくなります。
そこでちょっと人より知識が豊富だとか、理屈に長けているぐらいじゃ、焼け石に水です。それぐらい、アルコールの長期的な影響とか、子供の頃から身につけた認知の歪みとかは大きいわけです。
ちょっと言葉は強烈ですが「狂っている」わけです。ところがインテリは、自分の論理的思考は正常だという幻想を持ってしまいがちです。それが回復しない理由でしょう。
さまざまな要素を公平に勘案して結論を出すことができないわけですから、そんな状態で自分の結論にこだわってみても前へ進めません。納得できない理屈や方法論であっても、目の前に提示された方法に身を任せていく。自分の結論が最善でないのだったら、自分で考えて結論を出すことは時間の無駄です。
僕自身は、自分をインテリだとは思っても見なかったのですが、AAの仲間たちは「邪魔になる知的プライドの持ち主」と見抜いたのでしょう。僕は、もう少し病気が進んで、自分の中の障害物が消えるまで、回復が始まらなかったわけであります。
理屈で理解しようとすれば、そこで立ち往生です。いずれ自分にも理解できる時が来る、と自分に言い聞かせて進しかありません。
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