心の家路 たったひとつの冴えないやりかた

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たったひとつの冴えないやりかた
飲まないアルコール中毒者のドライドランクな日常
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2007年03月15日(木) 飲酒によるストレスの拡大再生産

恋愛している時の、天にも昇るような幸福感は、いずれ消えていきます。大切な何かを失った悲しみも、時間と共に薄れていきます。

なぜなのか?

人間の体には恒常性維持(ホメオスタシス)という仕組みがあります。中学か高校で習ったはずです。たとえば体の水分が不足すれば喉が渇いて水を飲み、水を飲みすぎればおしっこがたくさん出るようになっています。こうやって体の中身を一定の状態に保っています。

人間の心にも同じような仕組みがあると考えるのが「相反過程説」です。恋愛の多幸感も、喪失の悲しみも、脳にとっては大変なストレス状態で、それを平穏な状態に戻そうとする働きがあるという考え方です。
ストレスがあると、脳の中である種のホルモンが分泌され、それが体をストレスに対処できる状態に調整します。このホルモンは同時に、人の気分を不安や憂鬱に導きます。

面白いのは、依存性のある薬物を体に入れると、この「ストレス対処のホルモン」が分泌されるというのです。薬が体から抜けていくことがストレスであるようです。酒を飲んで気持ちよくなっても、酒が抜けていくと気持ち悪くなるという経験は、誰にでもありますね。要するに、薬で気持ちよくなると、脳は気分が悪くなるように自己調整するわけで、相反過程が上手く説明できます。

気分が憂鬱である、あるいは仕事でストレスを感じているとします。
それを、酒を飲んで気分を晴らすことにします。
いったんは気持ちよくなりますが、やがて酒が抜けてきて、ストレス対処のホルモンがでて、憂鬱あるいはストレスが強まります。酔いは短時間でなくなりますが、ホルモンは長いこと出続けますから、飲む前より状態は悪くなり、気が晴れず、ストレスも強く感じることになります。
そこで、次回はもっとたくさん飲んで、沈んだ気分を盛り上げようとします。
たくさん飲んだぶんだけ、もっと憂鬱になります。
そうやって、デフレスパイラル的に、どんどん悪化していくわけです。

憂鬱な気分やストレスを解消するために酒を飲むと、依存症になりやすいのです。そして、依存症者が「ストレス解消のために飲む必要がある」という言い訳を用意したとしても、そのストレスは実は自らの飲酒によって拡大再生産したものに過ぎないのでしょう。

前の日に具っする眠れて気分が良く、ストレスも感じていなくて体調がいい休日・・・そういう時を選んで酒を飲んでいれば、依存症にはならなかったかもしれませんね。


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by アル中のひいらぎ |MAILHomePage


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