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たったひとつの冴えないやりかた
飲まないアルコール中毒者のドライドランクな日常
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2006年12月11日(月) 病院メッセージ 今年もそこそこの数、病院メッセージに行かせてもらいました。
病院メッセージというのは、AAメンバーが病院にうかがって、アル中の患者さん相手に話をするものです。患者さんは、病院の治療プログラムの一環としてほぼ強制的に参加するケースもあれば、出たい人だけ出ればいいよという病院もあります。もちろん、前者のほうが圧倒的に参加人数が多くなります。
どちらが良いかはわかりません。自発的に参加したからって、断酒する人の割合が増えるようには感じられません。だから強制参加のほうが、断酒する人の絶対数は増えそうな気がします。
もちろん、こちらとしては自発的な参加者相手のほうが、やりやすいです。強制参加で人数が多いところへ行くと、「何しに来やがった」という反発心も強かったりするので、気を抜けません。
しかし、入院中は真面目に自主的にプログラムに参加している人が、退院後はAAや断酒会にいっさい通わず、通院もせず、もちろん抗酒剤も飲まない、もちろん結果は推して知るべし、このほうが普通だったりします。
病院のスタッフにしてみれば、やる気を持って治療に取り組んでいた人が、退院後は手のひらを返したようにやる気がなくなるケースを見て、すっかり不信感を持ったりするようです。でも、そういう病気ですから。
人数が増えてくると、どうしても相互通行的なやりとりをする余裕がなくなって、12番目のステップの活動というより、単なるAAの広報活動になる感じがします。広報活動だって、メッセージを運ぶ一環だと言われれば、確かにそうですが。
日本での病院メッセージは、皆で一室に集まってするケースが多いです。元祖アメリカでは、病室のベッドサイドまで行って、個別に話をすることが普通に行われているそうです。
日本でもそうしたことができないものか。そういう疑問に、ある精神科医が答えてくれました。
それは病院の責任問題なのだそうです。たとえばベッドサイドで話をしているときに、患者さんが興奮してAAメンバーを殴りつけ怪我をさせたとします。それを考えねばならないのが、精神病院の現実です。補償という問題を抜きにしても、日本ではそうした事故が起こると、病院側の管理責任を問う声が上がってしまう。だから、病院としては慎重にならざるを得ないと。
それは社会の問題なので、たとえAAメンバーが「もし事故の被害を受けても、なにも補償を求めない」という念書を出しても、解決するものではありません。
もっとも、それは病院から地域の断酒例会やAAミーティングに参加することにも、同じ事は言えたわけです。いまだそれにすら慎重な病院もあるものの、ここ10年・20年の間に、驚くほどの変化があったのも確かです。
せっかく受け取ったのに、贈り続けなければ失われる。不思議なプレゼントであります。
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