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たったひとつの冴えないやりかた
飲まないアルコール中毒者のドライドランクな日常
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2006年09月19日(火) 厳罰化 こんな話はニュースサイトの解説記事にいくらでも載っているのでしょうが、まあ雑記もネタ不足なんで。
元来刑法は、故意による犯罪は重く裁き、過失による犯罪は軽く裁く傾向があります。
例えば殺人の最高刑は死刑です。判例では、3人殺せばたいてい死刑、1人なら最高でも無期懲役、2人が境界線らしいです。それに対して過失致死は罰金刑しかないので、刑務所にはいることはありません。
何でこんなに違うのかといえば、刑法が定められたのは明治四十年代。複雑な機械が普及した時代ではなく、日常生活の中で過失で人が死ぬことなんて考えられない時代だったからなのだそうです。
業務上過失致死ってのは5年以内の禁固懲役。業務ってのは仕事に限らず、日常生活で繰り返し行うこと全般が含まれ、車の運転も入ります。なぜ普通の過失致死より、業務上のほうがずっと重いのかというと、危険な機械を日常的に使う人間には、大きな注意義務が背負わされているのであります。
車を運転して人をひき殺してしまった場合は、この業務上過失致死(業過)罪に問われることになるます。
泥酔して車を運転し、事故を起こして人を死なせる事件があっても、最高で5年の刑にしかならないのは「軽すぎる」という意見があって、新設されたのが「危険運転致死傷罪」。こちらは最高刑が20年と、人生を棒に振るには十分な刑でありました。これは過失じゃなくて、故意だよと(準故意犯)。
しかし、この「危険運転致死傷罪」には意外な落とし穴があったのです。
危険運転に問うには、飲酒運転だったことが証明されないといけません。そこで、事故を起こしても被害者の救護なんて行わずに現場から逃走してしまう人間が現れました。そして翌日酒が冷めた頃に警察に出頭します。そのころには呼気にアルコールが入っているわけもなく、危険運転致死からは逃れられるわけです。
業過が5年、ひき逃げが5年。併せて10年になるかというと、そうはなりません。併合罪はいちばん重い罪の1.5倍までですから、7年半が最高刑。20年の約1/3で、ずいぶん「お得」です。
福岡で子供3人が死んだ事件では、犯人は壊れた車で現場から逃走を試み、さらに友人に水を持ってこさせて大量に飲み、飲酒をごまかそうとしました。
こういう「逃げ得」の事実が知れ渡って、結果としてひき逃げの件数がそれまでの2倍、約2万件に増えてしまったのだそうです。
それで今度はひき逃げの罪を重くするんだそうです。8年ぐらいにすれば、業過とあわせて10年ぐらいの量刑が増えるとか。まあ、ひき逃げは故意犯だからなぁ。
それにしても、なんというか「いたちごっこ」であります。救護があれば助かったはずの命が失われた場合だってあるでしょうから、被害者にとっては殺人に等しい行為で、厳罰もやむを得ないのかもしれません。そうして厳罰化のあげくに、やっぱり飲酒事故が減らなかったりすると、今度は全部の車にGPS付きのドライブレコーダー搭載が義務づけられる日がくるのかもしれません。
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