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たったひとつの冴えないやりかた
飲まないアルコール中毒者のドライドランクな日常
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2006年03月14日(火) ミステリー 推理小説の表紙カバーには「主な登場人物」の一覧が載っています。そしてこの登場人物一覧の中に犯人がいるのが「お約束」とも言えます。
もちろんせいぜい10人ほどしか並べられないので、それ以上に登場人物が多いときには犯人が入っていないという場合もありますが、経験的には少ないです。
マット・スカダー・シリーズにおいても、当然この法則は当てはまります(はずです)。
とはいうものの、シリーズ物ですから、今後も毎回出てくるだろう人物が犯人とは考えにくいです。もちろん、まれにそう言う場合もあります。場合によっては探偵本人が犯人という場合すらあります。しかしそういう「反則」もしくは「反則すれすれ」のことは滅多には起こりません。三毛猫ホームズで片山兄妹・石津刑事・栗原警視あたりは安心して犯人から除外できないと、シリーズが続いてくれません。
マット・スカダーでは、一覧の半分ぐらいが「次の話でも出てきそう」な人であります。
そうすると5人ぐらいしか残りません。であるのに、犯人が誰だか分からないというのは悔しいことであります。
マット・スカダーは本格推理ではないので、密室のトリックを解いたり、偽のアリバイ(不在証明)を暴いたりという必要はありません。だいたい5人の誰もアリバイがなかったりします。同じように誰も「殺しの動機」がなかったりします。
サスペンス小説じゃないんだから、激情に駆られての殺人であるはずがありません。少なくとも未必の故意が認められるだけの計画性のある殺人のはずです。だから「なぜ」の解明は必須です。
というルールでゲームは進むわけであります。ハードボイルドな主人公は、物語の進行に合わせていろんな人に会い、いろんな物事の断片を集めていきます。そして、探偵が「ジグソーパズルのピースはこれですべてそろった」などとぬかすときには、次のページから謎の開陳が始まるという警告であります。そこのページに至っても、まだ5人のうち誰が犯人かも分からない場合には、
「くそー、わからねー」
と敗北を宣言して次に進むわけであります。僕の場合、もう一度読み直して考えることはしません。素直に謎解きを読みます。ああ、しまったこいつが犯人だったのか。そう納得できる場合には「おもしろかった」ということになります。万が一犯人が当てられた場合には、おもしろさは倍増するわけですが、毎回当てられたら逆につまらなくなるでしょうね。
一番つまらないのは「俺の推理だって成り立つじゃねーか」という場合であります。そういう推理が成り立たない理由がちりばめてないと、漏れのある話になってしまうのであります。
ローレンス・ブロックに対して、今のところ0勝2敗であります。こうでなくては。
ハードボイルドな主人公は街の喧噪の中に姿を消していきます。物語は余韻を残して終わります。amazonから次の二冊を発送するという連絡が届きました。
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