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たったひとつの冴えないやりかた
飲まないアルコール中毒者のドライドランクな日常
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2006年01月26日(木) 一過性のマゾヒズム アダルトな話を含んでいるので、そういうのが嫌いな方は読み飛ばしていただきたいです。
今でこそインターネットはアダルト画像であふれかえっていて、子供にパソコンを触らせるときにはネットワークから隔離するか、フィルタリングソフトをかませないと安心していられないのでありますが、僕がインターネット接続を始めた頃(つまりNifty ServeのINETゲートウェイの頃)はアダルト画像なんて、ごく珍しいものでありました。
理由は簡単で、当時のモデムの速度では、小さくて粗いアダルト画像でも、転送するのに何十秒〜何分もかかったからであります。ホームページに(アダルトじゃなくても)画像を貼り付けてあるだけでひんしゅくもので、テキストだけのページを用意していないと「配慮が足りない」と言われた時代でありました。
でも、そんなころでも果敢にアダルト情報の発信をしていたサイトもありました。思い出されるのが(もちろん今でも存在するのですが)Tokyo Toplessという、その名の通りトップレス(つまり裸の胸だ)の写真を掲示しているサイトであります。だからアダルトと言っても、コンビニの店頭売り雑誌の程度の内容だと思っていただければ結構です。
僕は巨乳というものにはあまり関心がなかったものの、当時のインターネットは村社会のようなもので、アンダーグラウンドなものなんて存在する余地もなく、ほかに選ぶものもなかったおかげで、そんなところを定期的に訪問していました。
サーバーの容量が少ない時代でしたから、モデルの画像は頻繁に(追加じゃなくて)入れ替えが行われていたように思います。そのかわりに、テキストによるアダルト情報が膨大に追加されていました。
まだまだ世間知らずだった(いまでもそうですけど)僕ちんが、男と女の関係という広大無辺な地平へと誘われていく、ひとつのきっかけでありました。
そのサイトと、そこからのリンク先には、当然まっとうなアダルト情報というものも多かったのですが、やはり(?)興味を引きつけられたのは、各種の異常性欲に関する情報でした。特に多かったのがサド・マゾ(つまりSM)に関する情報でした。世間で流行っていた(のか?)ソフトSMなどという最終的にセックスを目標とした、ある意味まっとうな性欲というものではなく、相手に苦痛を与える・苦痛を与えられるということに快感をもつ男女がいるのだというなどなど、まさに「知らなかったこと」ばかりでありました。
なかでも「縄師」という女性を縛ることを職業としている人の話は印象に残りました。もちろんこれはたまたま男性が女性を縛るケースであって、世の中には逆もあるのだということは当然であるのですが。
縄師の言葉によれば、いやがる相手に無理やり苦痛を与えているわけではないというのであります。もちろん相手は縛られる苦痛などに慣れてはいないので、最初は心理的に抵抗があるわけですが、次第にそれに慣れていって、やがては苦痛と屈辱の中に不思議な心理的充足を得るのだそうです。そこに充足がなければ人は好んで苦痛など受けれるはずはありません。
結局縄師は自分のサディスト的欲求を満足するために縛っているわけではなく、相手を充足させるために拘束しているのです。そうでなければ単なる傷害行為ですからね。
苦痛で心理的充足を得る女性というのには決まったタイプがあって、自分に自信がない、自信を与えてくれる存在もない、対人関係に不安を抱えた人だというのであります。そして苦痛を与えられることによって不思議な解放を得る。なんだか、依存症になる人とちょっと似ているかもしれないと思いました。
そして、マゾヒズムというのは「卒業する」ものだと書かれていました。苦痛によって得る心理的充足が、本当の充足でないと知るからなのか、それともひょっとしたらそこに何か成長があるのか、単に虚しさを知るだけなのか、マゾヒストでない僕にはわかりません。しかし、数ヶ月から数年で人はマゾヒズムに興味を失ってしまうのだそうであります。
しかし、縛る側は相手を充足させることによって自分の充足を得ているのであります。したがって縛る側には卒業はなく、相手を失ったら次を求めて行くしかありません。実は依存していたのは縛る側のほうだったのであります。
だがまれに、卒業できないマゾヒストがいて、たいていは子供の頃に父親から暴力をふるわれて育った人であったりするのだそうです。そして縛る人間がいかに努力しても、そうした人間を決して充足させることはできないという話でありました。
縛る人間と、単に自分を充足させるために暴力をふるう人間と、本質が同じなのかどうかはわかりません。ただ、世の中は単に暴力をふるうことで自己充足しようとする人間と、その関係から卒業できずにいる人間であふれかえっているんだと知るのは、もっとずっと後のことであります。
気分が悪くなった? だから読むなっていったのに。
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