心の家路 たったひとつの冴えないやりかた

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たったひとつの冴えないやりかた
飲まないアルコール中毒者のドライドランクな日常
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2005年09月25日(日) 心身症?

午後5時半であっただろうか。僕は今や自分専用の寝室となってしまった2階のテレビルームに布団を敷き、マンガ雑誌をひろげて読むでもなくごろりと横になっていた。

この3連休に予定していた諸々のことはとりあえず済んでいたので安心していた。それはたとえばFAX回線がつながらないトラブルの解決であったり、テレビの伝送路の見直しであったり、子供を実家のお祭りに連れて行くということであったり、色紙のためのイラストを頼む手紙を出すことであったりと、かなりコンパクトなTO DOリストだったが、それはうつ状態の自分にはふさわしい長さだったと思われる。ともかくリストの中身は空になり、ゆっくりとくつろいでいたのである。

妻が内線を鳴らしてきた。夕食にはずいぶんと早い。
「○○ちゃん(上の娘)が倒れて、胸が苦しいと言って起きあがれないの」
とりあえず駆けつけて、背中をさすっている妻をどけて皮膚を見ても外傷はない。熱もないようだ。ぶつけたとか転んだということもないらしい。FAX回線が回復していたおかげで、救急当番医のリストの取り出しに手間がかからなくて済んだ。気が急いているときにはFAXは大変助かる。電話で診療科目と名前と住所と電話番号を延々聞かされるのはうんざりするものである。
小児科の当番医に電話してみると、症状が重いようなら直接救急病院に連れて行ったほうがいいとアドバイスされる。

車のライトをハイビームにして、混み合う週末の市内を押し通って行った。

この救急病院は何年か前には小児科医が全員辞めてしまって、小児科を標榜しなくなっていたはずなのに、いつのまにか立派な救急センターができていて、子供の年齢を言っても嫌な顔をせずに引き受けてくれるようになっていた。
小児科医がいなくなったのも自由競争の結果であれば、立派な救急センターができたのも自由競争の結果かもしれない。

トリアージセンターで受付をすませ、いすに座って順番を待つ。体温はさっき測ったら36.4℃あったはず。チアノーゼも起こしていない。だが、腕に触っていると、その腕がだんだん冷たくなってくるような気がする。このままどんどん冷たくなってしまって、二度と暖かくならないのではないかと不安になる。世の中にこんなに大切なもの、失いたくないものがあったとは今まで気がつかなかった。すごく動揺する。もう一度体温を測るとさっきより上がっていて安心する。息が苦しいと言い、背中と胸を押さえるので、気胸ではないか、酸素が足りないのではないかと心配になる。

看護婦がやってきて、何かの機械のセンサーらしいクリップで娘の指を挟む。しばらくして出た数値を書き込むと、「安心してください」と言って去っていった。

医師の診察を受ける。「酸素不足は起こしていません」と結果を告げてくれる。じゃあ原因は何なのか? 尿検査・血液検査・心電図・レントゲンをやって、検査の結果が出てからもう一度診察ということになる。

テレビではモンゴル出身の横綱が、ヨーロッパ出身らしい力士を破って優勝を決めていた。豊かになった日本では力士を目指す少年が減ったというが、貧富の差が拡大する世の中になれば、腹一杯ちゃんこを食べるために相撲部屋の門をくぐる少年も増えるだろうか。

心電図をすますころには、痛みはどこへやら・・・。けろりとしているので、「注射が効いてきたかなぁ」とたずねてみると、「血を抜かれただけで、注射はされてない」と言っていた。医者が「ストレス性の・・・」と言うんじゃないかと予想がつく。

1時間ほど待って聞いた結果はやっぱり「ストレス」・「精神的なもの」ということだった。ストレスが身体の症状を呼び起こすということは、身をもって知っている親であるから、子がそうであると聞いても驚きはしない。逆に身体に出てくれてよかったと思うぐらいである。
しかし、原因がストレスだとすると、くり返される心配がある。そのたびに救急病院にお世話になるわけにも行かない。痛いのは事実なのだから・・・ということで痛み止めを処方してもらう。5,000円払って病院を出た。

ひさしぶりに長女に添い寝をする。ずっと長いこと、添い寝をして寝かしつけてきたのだが、下の子が小学校に上がって、同じ時間に姉妹そろって寝るようになってから、添い寝は一度もしたことがない。

一人部屋を手に入れた娘の布団の横に寝て、ぽつりぽつりと話をする。寝付きが悪くて、なかなか眠れないのだそうだ。親が片方がうつで仕事が半分、もう片方の親もうつで入院準備中では、なかなか安心しろと言ってもできるものではなかろう。
安心して眠れるようになるまで、当分添い寝をしてやろうと思った。


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by アル中のひいらぎ |MAILHomePage


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