心の家路 たったひとつの冴えないやりかた

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たったひとつの冴えないやりかた
飲まないアルコール中毒者のドライドランクな日常
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2004年07月21日(水) 痛い

夕方会社に戻って、社用車のステーションワゴンを降り、荷物を車から出そうと荷室から台車をまず下におろそうとしました。ところが台車を持った場所が悪かったらしく、傾けると同時に開こうとする台車の金具によって、僕の左手の小指は押しつぶされてしまいました。

必死で小指の根元を右手で握って止血すると、しばらくして血が止まりました。でもちょっとバンドエイドを張っとけば大丈夫と言える状態ではなかったので、会社の人に市内で一番大きい私立病院へ連れて行ってもらいました。この病院は救急指定病院なので、24時間365日受け付けてくれます(ただし、小児科医はいません)。

赤い看板の救急入り口から入り、トリアージステーションに行くと、すぐに処置室へ連れて行ってくれました。きっと止血に使った右手が血だらけだったせいでしょう。
対応してくれた医師は「僕は手科外科にいたことがあってね、手の処置は詳しいんだよ」と頼もしいことを言ってくれましたが、実際に処置するのは若手の医師で、しかも見学している医師が二人覗きこんでいました。
「神経も、筋肉も断裂していないようだね。でも傷口は縫う必要がある。部分麻酔でこれからすぐ始めよう」

「親指以外の指の時には、指の根元のここに麻酔を打つんだ」とサインペンでマークしてくれました。若い医師は忠実に麻酔を打ちます。「神経がこう通っているから、ここが一番痛くない。とは言っても痛いがね」。(うう痛い)。
そして、ゴムの物体を取り出すと、僕の小指にかぶせました。「こいつは通称逆コンドームといって、止血に便利なんだ」「質問です。○○法でやらないんですか?」「それだと止血効果しかないが、これだと止血と駆血が同時にできて便利だ。止血だけだと、小指に余った血が処置のときに出るが、駆血すれば血が出ない。ほらコンドームと同じ臭いがするでしょう」(するする)。
若くて美人の看護婦さんが「大丈夫ですか? 痛かったら言ってくださいね」と声をかけてくれましたが「麻酔だから痛くないですよね」と自己ツッコミを入れて視界から去りました。

「じゃあ、つぶれている部分は取り除くんだ」「さて縫おう、垂直に入れて、垂直に出すんだ。だめだ、やり直し」「この場合は、切れている皮膚のほうから針を入れる。なぜだかわかるかな?」(わかりませーん)。
こんな風にして、処置室の中はなごやかな実習ムードに包まれていました。救急外科なんてのはきっともっとすごい怪我を日常的に相手にしているのでしょう。僕にとっては一大事でも、医者にとってはただの怪我であり、腕を磨くチャンスであったのでしょう。

処置が終わると、看護婦さんが流しで傷口を石鹸で洗ってくれました。しみてるのでしょうが、麻酔が効いているので平気でした。トリアージステーションの前では、ずいぶん待たされていると文句を言っている人がいました。

本当だったら治療費はいったん自費で支払って労災の申請をするのがスジなんでしょうが、お金が帰ってくるのは何ヶ月も先なので、健康保険を使わせてもらうことにしました。自分の車のドアに指を挟んだことになっています。

左手の小指はコンピューターのキーボードを打つときに大切な指です。ShiftキーとCtrlキーを担当していますから。しばらくは左手の薬指が、この二つのキーとTabと1qaz(最左列)をまかなうことになりました。


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by アル中のひいらぎ |MAILHomePage


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