面接 - 2004年09月01日(水) 8月31日火曜日。 デイビッドのコンピューターが壊れる。今日はデイビッドは仕事をする予定だった。わたしはそれでもデイビッドのアパートにいられるだけでよくて、ナターシャと遊んでローラーブレイドして買ってくれたアイザック・バシュヴィス・シンガーを読んで、デイビッドが仕事を終える時間までひとりで過ごそうと思ってた。 コンピューターは突然完璧にダウン。急ぎの仕事の大事なファイルが、取りあえず全く消えた。デイビッドはパニックになって、あちこちに電話して修復の可能性を当たる。 一日がそうやって過ぎた。それでもランチを一緒に公園で食べたり、夕方には1時間くらいキャッチボールもしてくれた。デイビッドがコンピューターの修理屋さんに行ってるあいだ、わたしは Barns & Noble の本屋さんの中のスターバックスで、持ってったアイザック・バシュヴィス・シンガーを読んで待った。持ち込んだ本っていう証拠にって、デイビッドは本の扉に「きみが『A day of Preasure』とおなじようにこの本も好きになってくれますように。Love, Dabvid」って、買った日の日付けを入れて買いてくれた。適当に書いた日付けはあとで間違ってるってわかったけど。 夜はわたしが晩ごはんを作った。デイビッドはこのあいだうちに来たとき、父がうんと昔に送ってくれた未開封のお寿司の海苔の賞味期限切れのを喜んで持って帰ってて、わたしはデイビッドんちの近くのグローサリーのお店でお寿司を巻くすまきが売ってるのを見つけて買った。 簡単な巻寿司を作ったら、デイビッドは大喜びだった。デイビッドはお寿司が好きってより、「海苔とごはん」が大好きっていうヘンなアメリカ人。ブラウンライスを炊いたからポロポロごはんがこぼれてキレイに巻けなかったけど、細長く切ったキュウリを草みたいにはみ出させたのをいくつか作って飾ったら、デイビッドは奇麗だって褒めてくれた。病院のキッチンで貰って来たチキンはナターシャのごはん用だったのに、デイビッドも食べたいって言ったからグリルする。 コンピューターは簡単には直らない。HD がまるで壊れちゃったから、無くなったファイルを修復出来たとしてもどのくらい時間がかかるかわからない。デイビッドがどんな気持ちか分かるのに、「きみの『海苔とごはん』が僕を元気にしてくれたよ」なんて言う。それから「せっかくきみのオフの日だったのに、ちっとも一緒に遊べなくてごめんよ」って謝ったりする。「謝まんなくていいよ。Don't worry too much, David. Everything's gonna be fine. For sure」。わたしはデイビッドを抱き締めて眠った。 9月1日水曜日。 朝、そのまま仕事に行くつもりだったけど、道が思ったよりうんと空いてたから一旦うちに帰る。帰ったとたんに電話が鳴った。履歴書を送った病院からだった。「面接に来てください。今日来られますか?」。ダメ。今日は仕事。明日かあさってに仕事の時間を変えてもらって時間を作って行くことにした。 病院に着いてチーフに話そうと思ったら、今週の週末も出てくれないかって言われる。今週末にシフトが入ってるポーリーンが目の手術を受けて休んでるから、その代わりに。ふつうだったら断ってる。先週の土日働いたばかりだ。でも明日に代休を貰うことを条件にオーケーした。 お昼休みに履歴書を送った病院に電話する。明日の11時に面接。 面接にはちょっとは自信がある。もう3年この仕事をやってる。難しいケースもたくさん経験してきた。だけどわかんない。ただ、病院変わりたいなって、なんとなくずっと思ってた。こんなに突然行動起こすとは思ってなかったけど。次の病院にものすごく期待してるわけじゃないし、おなじシティ・ホスピタルだからお給料も殆ど一緒だし、もっと近くのお給料のいい私立の病院にチャンスがあるかもしれない。だけど病院を変わればいろんなことが変わる。変わりたい。変えたい。少し。もしも採用されなかったら、それはそれでいい。次のチャンスを待てばいいから。 -
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