修復の途中 - 2004年08月02日(月) 火曜日にディディーから電話があって、水曜日にはディディーんちに行ってタンゴを踊った。ディディーはすごく上手くなってて、くやしいけどたくさん教えてもらった。 木曜日はお休みで、ジェニーとロッカウェイのビーチに行った。それからいつも車から見てただけのあのクロス・アイランド・パークウェイの海沿いの道に、ローラーブレイドをしに行った。 金曜日にはオスカーとラティノ・フィルムフェスティバルのプレミアム映画を見に行った。オスカーの友だちが撮った作品で、ものすごくよかった。 デイビッドとは毎日電話で話した。デイビッドは水曜日の夜にロードアイランドから帰って来た。週末はわたしは仕事で、土曜日に仕事が終わってから晩ごはんを一緒に食べる約束だったけど、デイビッドの調子が悪くて「明日にしよう」って言われた。 日曜日。 会いに行った。 ナターシャは前と変わらずに大喜びでわたしを迎えてくれた。あの日、わたしに吠えたナターシャのことをわたしは少し心配してた。3回目のラディエーションを終えてから、副作用のせいでで目の周りの毛が落ちてた。それでもナターシャは可愛い。そんなこと関係なく可愛い。わたしにまとわりつくナターシャが、可愛くて可愛くて仕方ない。よかった。ナターシャはなにも変わってない。 会いに行く途中も会ってからも、長いこと長いこと長いこと会ってないみたいだった。 デイビッドはとても優しかった。とても優しくたくさん微笑んでくれた。優しさの意味がつかめなくて、わたしは緊張してた。ディナーを食べに行って、いつものようにオーダーしたふたつのお料理を半分こしあって、いつものようにジョーク言い合って笑いながらおしゃべりしてる間も、わたしは少しだけ緊張してた。デイビッドは、きっと以前ならわたしがムキになって言い返したりしたようなことも何度か言った。わたしは少しだけ緊張したまま、笑って聞き流したり笑って返事した。 デイビッドはあれからオスカーと話したかどうか聞いた。わたしは金曜日にラティノ・フィルムフェスティバルに出品してるオスカーの友だちの映画を観に行ったことを話した。サイコセラピーのことを聞きたかったのかもしれない。だけどわたしはもう大丈夫だから。大丈夫だから、もう敢えてそれを言わなかった。 デイビッドのアパートのドアの前に知らないマウンテンバイクが置いてあった。引っ越してった誰かが置き忘れてったんだってドアマンのおじさんが言った。それを借りてナターシャを連れてデイビッドと真夜中のバイキングに出掛ける。ナターシャが帰りたがらずに何度も何度も公園を3人で走った。捨て猫のいる丘のところで、塀によじ登って猫たちを見てたわたしを、デイビッドは抱きかかえて降ろしてくれた。いつものことなのに嬉しかった。 そして一緒に眠って、いつものようにわたしはデイビッドより早く起きて、今日はデイビッドんちでシャワーを浴びてそのまま仕事に行った。出掛ける前にベッドに戻っていつものように「行って来るね」を言う。それから「I like you」ってほっぺにキスしたら、ちゃんと「I like you too」が返って来た。 仕事が終わってから、休暇から帰って来たロジャーとごはんを食べに行く。 傷つけ合って憎み合うような言い争いに至るきっかけを自分から作ることをやめたいのなら、どうしてやめたいのか言ってみな、ってロジャーは言った。もう傷つけたくないから。自分もデイビッドも。もうあんなにイヤな気持ちになりたくないから。もう気が狂ったみたいな自分が嫌だから。もうデイビッドをあんなに怒らせたくないから。 「50点だな」ってロジャーが言った。わかってる。大切だから。デイビッドが大切だから。デイビッドとの関係が大切だから。デイビッドとの時間が大切だから。大切に育てていきたいから。思い合って大切にし合いたいから。 まだ修復の途中。 ジーザスはわたしに言い続けてた。変わりなさい。助けてあげるから。って。 変わる意味がちゃんとわかった。 まだ少し苦しくて痛い。 だけど、変わる。自分のためとデイビッドのためと、ふたりのために。 -
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