天使に恋をしたら・・・ ...angel

 

 

ハンプトン - 2004年05月08日(土)

天気予報は午前中サンダーストームで、「天気が悪かったらやめよう」って木曜日の晩デイビッドは言ってたけど、わたしはお昼から晴れるよって譲らなかった。夜中のうちにどしゃぶりカミナリいなびかりまとめてガンガンやってくれて、朝起きたらピカピカのお天気だった。お昼前に上機嫌の電話がかかって来た。「見てごらん、外」「ほらね、あたし言ったでしょう?」。で、1時の約束をちょっとでも早くって1時15分前にして、わたしはいちごのパックとナターシャのお水とボウルを持って車に乗って、でも道が混んでたから結局1時にデイビッドんちに着く。

デイビッドはビーチの用意とナターシャをわたしの車に乗っけて、デイビッドの運転で出発。

デイビッドは夏のあいだ、ハンプトンにシェア・ハウスを借りて、ウィークデイの何日かをそこで過ごす計画だった。先週、オーナーとインタビューしてデイビッドはそこのシェア・ハウスをほぼ決めてた。

ハイウェイの途中のホットドッグ・スタンドでホットドッグとバーグズのルートビアとサワークリーム&オニオンのチップスをデイビッドが買ってくる。ルートビアが好きってだけで結構珍しいのにカフェイン入りだからバーグスのが好きってのも、サワークリーム&オニオンのチップスが好きなのも一緒で、笑った。

道に迷いながら辿り着いたシェア・ハウスはとんでもないうちだった。そのうえビーチから遠いしとてもとてもハンプトンとは思えない場所で、そのシェア・ハウス借りる計画は没。ビーチへ行く道には豪邸じゃないけど素敵なおうちがたくさん並んでて、「こういうとこ想像してたよ。バカだな僕は」ってデイビッドはがっかり声で言った。


ビーチは奇麗だった。ロードアイランドより奇麗だった。でもわたしはロードアイランドのビーチのほうが好きだと思った。陽射しは眩しかったけど風が冷たくて、ビーチに敷いた大きなブランケットの余った部分をふたりで肩からぐるんと覆ったら、デイビッドがそのうえからわたしを抱き寄せてくれた。映画に使われるようなビーチに降りる階段がついた大きなおうちがビーチ沿いに並んでて、「Something's Gotta Give」に使ったおうちはどれだろって思ってた。ビリージョールのおうちもあるらしい。デイビッドの腕の中はあったかかったけど、風があんまり冷たくて長いこといられなかった。

反対側の入り江に建つレストランであったかいもの飲むことにした。駐車場に車を停めて降りたら、桟橋のあたりにカナダ・ギースの親子を見つけた。二羽のカナダ・ギースの後ろから、生まれたてのひなどりたちがよちよちあとをついて歩いてた。「見て見て。カナダ・ギースのベイビーだよ」って夢中になる。桟橋からひなどりたちがひとりひとりポトンポトンと水に飛び下りる。「すごいよ、なんであんなこと出来るんだろ。あんなにちっちゃいのに」って、今度はデイビッドが興奮する。

「ねえねえ、カナダ・ギースの赤ちゃんってなんて言うんだっけ? ゴブレットじゃないしゴブリンじゃないし」「ギブレット」「違うじゃん」「知らないよ」「名まえがあるんだよ。忘れちゃったよ、いつも言ってたのに」。なつかしかった。あの街で、カナダ・ギースの赤ちゃんが生まれるのが、春が来るたび楽しみだった。公園のちいさな湖のほとりをお散歩しながら、ほら赤ちゃんだよ、かわいいねえ、っていつもあの娘に話してた。あの湖、なんて名まえだっけ。それも忘れちゃった。

レストランのデッキの席で軽いお食事をしてたら、陽が真っ赤に落ちて行った。ゆっくりゆっくりゆっくり。そしてまるかった大きな赤いかたまりが滲んでいって、空に赤とオレンジの長い長いグラデーションが出来る。それが秒刻みに少しずつ色と線を変えて広がって行く。広がって広がって、それから陽がすっかり落ちると、空のグラデーションはフェイドしながら幕を閉じた。すごかった。壮観だった。


高速をぶっ飛ばしてシティまで帰る。
デイビッドんちの近くのビデオやさんでデイビッドのクライアントが撮った映画を借りたのに、うちに戻ってからケンカした。デイビッドが ex- ガールフレンドが最近アップステイトに買った家を見に行くことで。彼女がディナーを用意して、それからゲストルームに泊ってけばいいって言ったって。わたしは多分自分がそれをイヤだと思ってる以上のことを口にして、デイビッドは言い訳しながらもわたしが何も心配する必要のないことを勝手に心配してるって非難して、わたしは心配してるんじゃなくてそういうのが理解出来ないんだって怒って、デイビッドはせっかくの素敵だった一日をわたしが台無しにしようとしてるってなじった。


「僕はね、今までどのガールフレンドとだってきみといるときほど心地よくてリラックス出来て穏やかな気持ちになれることはなかったよ。きみと僕は自分の生活の中で大切にしてるものがおなじで大切にする気持ちもおなじで、好きなものもおんなじで一緒に楽しめることがたくさんあって、僕はそれをとても大事に思ってる。僕たちは以前よりうんといい関係を築いてきてるだろ? 違う?」。


それだけで充分じゃない、ね。なんでそう思わないの、わたし?
だって、ヤなものはヤなんだから。そういうのヤだって思うのはおかしい?
わたしがおかしいの? おかしくないよ、わたしは。おかしい?


デイビッドは眠るときにとてもとても優しいキスをくれて、朝起きたときもいつもみたいにおでこやほっぺじゃなくてくちびるに小鳥みたいな素敵なキスをくれて、帰るときにはマシュマロがふたつくっつくみたいなキスをくれた。それからわたしを見つめてわたしの頭を肩に引き寄せた。甘いの嫌いなデイビッドがそんなことしてくれるの初めてだった。





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