Purest of Pain - 2004年03月14日(日) 昨日の夜、デイビッドは来てくれた。 わたしはバースデーのディナーを作って、ケーキが好きじゃないデイビッドのためにアーモンドとピーカンとりんごのパイを作って、今日のバースデーのお祝いをした。日付けが変わる寸前にパイのキャンドルに火をつけて、ベッドルームでチビたちと遊ぶデイビッドを呼ぶ。 うわあ。こういうアップル・パイ、誰が作ってくれてたか知ってる? おばあちゃんのアップル・パイとおんなじだ。なんで知ってた? 僕が好きなアップルパイの焼き方。 驚いて椅子に座ってキャンドルを吹き消すデイビッドの首に後ろから抱きついて「ハッピー・バースデー」を歌ってあげる。12時ちょうど。デイビッドがわたしのバースデーにしてくれたように、12時きっかりに電話をしてわたしも「ハッピー・バースデー」を歌ってあげようと思ってた。電話じゃなくて、歌ってあげられた。12時ちょうど。 知らなかったよ。それにアップルパイじゃないんだよ。わたしの得意なヘーゼルナッツと洋梨のタルトのレシピを、うちにりんごしかないからりんごにしただけ。それから、2ブロック先のグローサリー・ストアに自分で行ってみて、ヘーゼルナッツを置いてないから代わりにアーモンドとピーカンを買った。アーモンドとピーカンを入れたお店の袋を持って歩くだけで、ものすごく足が痛くなった。 アーモンドとピーカンのフィリングが多すぎて、りんごがもっとたくさん入ってる方がいいなってデイビッドは言った。「じゃあ今度はりんごいっぱいにして作るよ」って言ったら「来年のバースデー?」って笑う。わたしは「まだ一緒にいたらね」って言いかけて、黙ってた。 昨日意地になってエクササイズして、今日2ブロック歩いて、前より腫れてしまった膝をデイビッドがマッサージしてくれる。痛い。痛いけど、よくなるような気がする。まるで PT がやるのとおんなじ。「ラッキーだな、PT は」って言う。こんな足触ったってラッキーなもんか。「見てよ、この太腿。こんなに筋肉落ちて醜い」。そう言ったら「気のせいだよ。右足と変わらないよ。両方おなじにガリガリで醜い」って言われた。前なら怒ってたかもしれない。人が深刻に不安になってるのにって。長いことマッサージしてくれて、「これでうんとよくなるよ」ってデイビッドはポンと膝を叩いた。「痛いじゃん」って叫んだけど、痛くなかった。 わたしのバースデー・パーティの写真で作ったスライド・ショウをデイビッドが見たいって言った。それから、レイク・タホーにスキーに行ったときのスライド・ショウも見せてあげた。BGM に使った曲をデイビッドは知らないって言った。「Purest of Pain」。レノの空港で撮ってくれた、ブレイスつけて両手に松葉杖持って車椅子に乗って笑ってるわたしの写真を見ながら、パーフェクトなタイトルだなってデイビッドが言う。「でしょ? だからこの曲にしたの」。 歌は言葉のわからないスパニッシュ・バージョンの方にした。歌詞が悲しすぎるから。 きみが去ってしまうことを僕は気づいてる。 誰かがきみのそばで待ってるのを知ってる。 そしていつかきみなしで生きてかなくちゃいけない日がくる。 その日が来るまで一日一日強くなれたらいいと思うよ。 きみが去って行くときに悲しまないでいられるように。 だけどなれない。 僕は弱さを隠すことすら出来ない。 毎日が冷たくてさみしい。 「そういう歌なの」「切ないね」「切ないと思う?」「切ないよ。悲しい」。 足の痛みだけじゃなかった。レイク・タホーの最後の夜、「僕は自由でいたい」って言ったデイビッドからわたしは欲しいものを何も期待出来ないことがわかった。いつかデイビッドからわたしは離れなくちゃいけないときが来ることもわかった。悲しかった。足の痛みより痛かった。デイビッドは知らない。レイク・タホーの写真の後ろに流れるこの歌に重なるわたしの痛み。 だけど一緒にいるとこんなにも満ちた気持ちになる。歩けない苛立ちもいつかデイビッドが違う誰かと結婚しちゃうことも、みんな忘れて幸せになれる。だから今うんと大好きでいるんだ。今。 帰り際に抱き締めてくれたデイビッドにもう一度ハッピー・バースデーを言う。 それからぎゅっと抱きついて「I love you」って言った。言ってやった。いいんだ、デイビッドが困ったって。 -
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