天使に恋をしたら・・・ ...angel

 

 

ブラックアウトのあと - 2003年08月15日(金)

イーストコースト全域が停電。
昨日突然ナースステーションの電気が消えて、コンピューターがダウンした。病院の中だけだと思ってたら、ニューヨーク・シティ全部だっていう。地下鉄で通ってるフィロミーナは帰れなくて、ラヒラんちに泊まることにした。帰るときに駐車場のおじさんが「州全部だよ」って言った。駐車場で車に乗ってデイビッドに電話したら、「気をつけて運転して帰るんだよ。信号が全部ブラックアウトしてるからね。タンゴも今日はお休みだよ」って。それからイーストコースト全部とカナダのオタワもモントリオールもって聞かされて驚いた。

木曜日。信号がブラックアウトしてたって、タンゴクラブがお休みだったって、デイビッドには会いに行きたかったのに、マンハッタンに行くほうの橋は全部通行止めらしい。停電なんかよりも会えないことがショックだった。

うちに帰るのに1時間半かかる。信号がついてない大きな交差点もみんなが慎重に運転して譲り合って、すごいなって思った。ひどく時間がかかった以外は安全に帰れた。

「今帰ったよ」ってデイビッドに電話する。うち中のキャンドルに灯をつけても、なんにも出来ない。デイビッドが1時間おきに電話をくれる。「たいくつだよ〜。会いに行きたい」「来られないだろ」「だってたいくつ〜」「僕もたいくつだよ」。11時を過ぎたらデイビッドの電話も途絶えた。わたしも眠ってしまった。あの人が電話をくれて、夜中に目が覚める。停電のこと言ったらすぐにテレビをつけてくれたけど、日本ではまだニュースになってないみたいだった。

朝7時に目が覚めた。ベッドルームの電気をつけたらついた。よかった。それよりキャンドルつけっぱなしだった。危ない。一度、バスルームのキャンドルをつけっぱなしにしてて、キャンドル缶に浮かべてた薔薇の花びらに火がついて、その火がちっちゃなテディベアに移って燃えて真夜中にスモークアラーム鳴らしたことがある。必死で火を消したけどアラームがいつまでも鳴りっぱなしで、大家さんが起きてきたらどうしようって大汗かきながら雑誌でアラーム煽り続けた。それから気をつけてるつもりだったのに。危ないったらない。

9時まで待って、デイビッドに電話する。今日はわたしはお休みで、昨日が最後の勤務日だったジェニーもお休みで、ジェニーとデイビッドと3人でビーチに行く予定だった。

今朝もまだ地下鉄は復旧せずに仕事がオフになった人たちがたくさんいて、テレビのニュースで「家にいないでビーチで過ごしましょう」って電力セイブを奨励してたらしい。それでジョーンズ・ビーチは今日は無料。おかげで東に向かう高速はものすごい渋滞で、デイビッドは我慢仕切れずにU-ターンを決めた。「やだ。行きたい。あたしたちは前からプランしてて、ブラックアウトのせいでビーチ行きを決めたこの人たちとは違うのに。ずるいよ。あたしたちが先なのにー」って、わけわかんないこと言って足バタバタさせる。

仕方ない。ビーチで会うことになってたジェニーに電話した。ジェニーもがっかりしてた。でもほんとにビーチまで3時間はかかりそうなくらいな渋滞だった。U-ターンして、うちのそばの公園で河を見ながらピクニックしようってデイビッドが言う。ジェニーは来ないって言った。ふたりで楽しんでおいでって。ジェニーとずっと楽しみにしてて最高のビーチ日和になったのに。ジェニーとふたりなら3時間かかったって絶対ビーチに行ってたのに。そう思ったらジェニーにすごく悪い気がした。


公園は水着姿で芝生に寝転がってる人でいっぱいだった。デイビッドは公園をとても気に入ってくれた。大きな木の下にバスタオルを広げて、デイビッドが持ってきてくれたコーンとブルーベリーとウォーターメロンと、わたしが持ってったピタブレッドとタジキとりんごとスナップルティーでピクニックする。「ビーチよりここの方がずっといい。砂まみれにならないし日陰があるし。ね、風がベタベタしないで気持ちいいだろ? 見てごらんよ、この木」「うん、葉っぱがきれい」。ふたりで寝ころんで木を見上げる。素敵。まだちょっとジェニーに悪い気がしてたけど、そんなふうにデイビッドと過ごせるのが嬉しかった。

わたしはタンクとショーツを脱いで水着になって、日の当たる場所で体を焼きたいって言った。デイビッドは暑すぎるのがイヤで木の下にいるって言った。ひとりで体中に眩しい陽差しを浴びながら、うとうとする。誰かが大声で子どもたちを叱る声で目が覚めた。振り向いたらデイビッドも眠たそうに目をこすりながら体を起こしてた。


もう5時を過ぎてた。うちでアイスコーヒーを作ることになった。近くのデリでミルクとアイスクリームを買う。フリーザーにアップルパイがあったから、それを焼いてアイスクリームを乗っけようと思った。うちのガレージの前に大家さんのフランクが座ってた。「ジョーンズ・ビーチに行って来たの?」「ううん。行くつもりだったんだけど、ひどい渋滞で帰って来たの」。それからフランクとデイビッドがおしゃべりしてるあいだ、わたしは毛を刈られてすっかり別人みたいになって落ち込んでるデイジーとおしゃべりする。「大丈夫よ。毛を刈られたってデイジーは美人だよ。大好きよ」って頭を撫でたらデイジーはわたしのくちびるをペロペロ舐めた。「ベッドルームにつけたクーラー、ちっとも使ってないじゃないか」ってフランクがわたしに言う。「今日これから使うよ」ってわたしは笑ってフランクに言った。


アップルパイがきれいに焼けて、デイビッドが一緒にアイスコーヒーを作ってくれる。デイビッド流のアイスコーヒーの作り方があって、わたしはコーヒーを沸かしただけで、あとは全部デイビッドがやってくれる。キッチンのキャビネットを開けてグラスを探しながら、「僕が最初プラスティックの食器しか持ってなかったから、それがいやで泣き出したんだ」ってデイビッドが言う。ex-ガールフレンドのこと。「あなたって彼女のことはたくさん覚えてるんだ。あたしのことは何にも覚えてないのに」って拗ねたら「3年つき合ってたんだから」って言う。「だってあたしの方が最近なのに、なんにも覚えてないじゃん、あたしが言ったこと」「そんなことないよ。なんでも覚えてるよ」「覚えてない」「じゃあさ、一年後にテストしてごらん。きみとのこと、たくさん覚えてるから」。

一年後。わたしは先のこと夢見てしまう。


来週わたしはまた一週間休暇を取ってる。デイビッドは、水曜日から3日間ロードアイランドに一緒に行こうって言ってくれた。そのときに両親がサマーハウスを使ったら連れてけないけどって。「行けなかったらどうなるの?」「どこか別のとこ探して行けばいい」「あたしひとりで?」「僕とふたりで」。

デイビッドに急に仕事が入ったらダメになるかもしれない。
でも、行けたらいい。行けたら素敵。5日後のことくらいなら、夢見てもいいかな。
嬉しくて嬉しくて、ブラックアウトの翌日がこんな幸せな日になった。


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