いつもそばにいてくれなくても - 2003年05月08日(木) 今日もひとりでタンゴに行った。 くるくるターンするのを覚えたら、ターンしなくていいところでまで勝手にくるくる回って叱られる。太ったあのおじさんは今日も来なかった。あのおじさんならくるくるくるくる回してくれて楽しいのに。カップルで来てる人はみんなとっても上手で、早くあんなふうに踊れるようになりたいと思うけど、なかなか上達しない。 終わったら携帯に「まだ踊ってるの?」ってメッセージが入ってた。 昨日デイビッドが電話をくれた。「タンゴに行くならきみが終わってから会おうよ」って。 電話をしてデイビッドをチャイニーズレストランの前で拾って、それからリンカーン・プラザに映画を観に行く。「Nowhere in Africa」。 ポップコーンとチェリーのタルトを買って、晩ごはん食べてないわたしはにくるみとレーズンが入った7グレインバンを余分に買って、デイビッドは相変わらずお店の女の子やチケット切りのおじさんをからかって、「ごめんなさい。この人ホントに失礼なのよ」ってデイビッドのジャケットのそでを引っ張ってシアターに入った。 アフリカが舞台のドイツの映画で、英語のサブタイトルで観る。ナチを逃れてドイツからケニアの僻地のファームに移り住むジューイッシュの家族の話。ナチとジューズとドイツとイギリス。戦争。家族。愛。テーマが分散してどれもなんとなく中途半端な気がしたけど、そういう曖昧さがいいのかもしれない。アフリカの絵が綺麗だった。動物たちもアフリカの人たちもアフリカの言葉も美しかった。音楽が最高に素敵だった。サウンドトラックの CD が欲しくなった。 映画の感想はおんなじだった。「綺麗な映画だったね。音楽がよかった。スクリプトはイマイチだったけど」「うん。彼があのままひとりでドイツに帰った方が自然だったと思わない?」「そう思った。アフリカの言葉は美しいね。神さまの意味のあの単語が好きだなあ」「NG なんとかでしょ? わたしもすごく綺麗な響きだと思った」。 そんな話をしながら、もう1時を回ってる真夜中のシティを歩いて、それからわたしが運転してデイビッドのアパートに行く。デイビッドはいちいちわたしの運転に口出しして、「教習所の先生みたい」ってわたしは怒る。 デイビッドをアパートまで送ったら帰るつもりだったのに、ナターシャに会いたくて帰れない。ナターシャに持って来たクッキーを「これはフラックス・シードで出来たクッキーなんだよ。すごくヘルシーなの。こっちはたまごがたくさん入ったクッキー。黄色いでしょ? たまごの色なの。全部自然の材料で作ったクッキーなんだよ。おいしい?」って、ナターシャに話しながら食べさせる。デイビッドはスイカを切ってくれて、「これはスイカだよ。おいしい?」ってわたしの口に次から次から放り込む。 「ベリーダンス、やってみてよ」って言うから、「手はねえ、こういうふうにするの。それで腰をこういうふうにアップアップアップって振るの」ってちょっと得意になって踊って見せる。「何回行ったの?」「まだ一回だけだよ」「へえ。すごいじゃん。それでそこまで出来るようになったの? きみ、タンゴよりベリーダンスのほうが似合ってるよ」。似合ってるかどうかは別にして、ベリーダンスが楽しくて好き。嬉しくなる。 それから「アフリカの女の子の真似してよ」って変なこと言う。頭にかごを乗っける格好をしてお尻を振って、映画で観たみたいな女の子たちの真似して歩いたらデイビッドが大笑いした。 突然デイビッドがベーグル買いに行こうって言い出す。 夜中の3時。ちょうどベーグルが焼き上がる頃で、焼きたての NY イチのベーグルをきみに食べさせてあげるよって。デイビッドの車で行ってわたしとナターシャが車の中で待ってるあいだに、デイビッドは自分の分の袋と、わたしがリクエストしたセサミシードとシナモンレーズンが入ってる袋を持って戻って来た。 外はまだ寒くて、焼きたてベーグルの袋があったかい。 袋を開けて、セサミシードのを千切って一口ほおばる。外側がカリッとして、中は少し粘りが強いなって思ったけど、デイビッドが NY イチって言うならそういうことにしてあげようって思った。 わたしが車を停めてるとこまで行ってくれて、デイビッドはバイのキスをほっぺたにくれる。わたしはお返しにハグをあげる。それからナターシャに思いっきり抱きついて「I love you」と「またね」のキスをいっぱいした。 自分の車に乗って、窓を開けて腕を伸ばして、車を出しながら後ろのデイビッドの車に手を振る。ルームミラーに、デイビッドの車のテールランプが遠くなってった。 わたし、デイビッドと過ごす時間が好き。 とても好き。 いくつもの愛のひとつでも、愛なんかじゃなくても、なんでもいい。 いつもそばにいてくれる人じゃなくたって、一緒にいるときどきの時間が好き。 -
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