許す - 2003年04月04日(金) 頭痛がおさまらなくて、今日も休んだ。 昨日のお昼ごろ、Dr. チェンが心配して電話をくれた。 ドクターの診察そのまんまで、次から次から質問されたけど、頭痛がひどかったのとなんとなく話したくなかったのとで、適当に答えてた。 今日も電話をくれた。 髄膜炎の可能性があるからスパイナル・タップしに行くとかって脅かす。「やめてよー。ただの頭痛だって。もうブツブツも消えたし、平気だって」。 スパイナル・タップって、強烈に痛い。骨髄液採取するやつ。前に住んでた街でやったことがある。ひどい偏頭痛で転げ回って、やっぱり ER に飛び込んだとき。3日間歩けなくて、1ヶ月腰が痛かった。 「昨日よりずっと元気になったじゃん」って、 Dr. チェンは笑った。 それから、先週の土曜日のクラブでのことを、Dr. チェンは謝った。すごく一生懸命謝ってくれた。ほんとはキスされそうになったんじゃなくて、された。ジャズ聴いてるとき。「ちょっとダンスフロア見てくる」っていきなりキスして席立ったから、怒るヒマもなかった。ダンスしてるときにまたされそうになって、「No! Donユt!」って両手でドクターの口思いっきり塞いだ。 「ごめん。ちょっと酔いすぎてた。ほんとにごめん。どうかしてた。僕は普通はそんなふざけた男じゃないんだけど。ごめん」。あんまり一生懸命だから、「酔ってたことはわかってるけどさ」って笑った。 ジェニーと一緒に、仕事終わってからお見舞いに来てくれるって言った。「スパイナル・タップするよ」って、まだ言ってる。 「何が食べたい?」って聞かれて、「なんかあったかいもの」って答えた。昨日から何も食べてなかった。マレージアンのヌードルとチキンを買って来てくれた。 Dr. チェンはジェニーに、先週末のジャズ・バーもクラブもすごく楽しかったことを話す。「知ってるよ、聞いた」ってジェニーが言ったら、「ちょっと酔いすぎたんだ。あんなことして」なんて言い出すから、慌てて「ストップ! もういいって」ってドクターの腕をひっ掴む。バカ。そんなこと、ジェニーにだって話してないのに。「何よ何よ。何があったの? やっぱりいいや。聞きたくない」ってジェニーが言った。うん。聞かないほうがいい。お昼休みに電話をくれたジェニーは、「Dr. チェンってほんとにいい人だよ。アンタのことものすっごく心配してさ」って言ってたばかり。 キスぐらい、なんて思えない。 一番許せないのは、結婚してるのにってこと。 許せるのは、奥さんを心底愛してて、アレはほんとにはずみだったってこと。もし奥さんと上手く行ってないとかだったら、100パーセント許せない。 二番目に許せないのは、たとえもしも Dr. チェンが結婚してなかったとしても、絶対にキスなんかされたい相手じゃないのにってこと。 だけど、いくら仲いい男友だちだったって、ふたりっきりで踊りに行ったりしたわたしが軽率だった。くっついても平気な「お兄ちゃんみたいな大好きな友だち」のマジェッドとはわけが違う。 だから総合して「許す」。 デザートに、アイスクリームにラム酒をかけて出す。 「ウイスキーもあるけど、飲む?」ってからかってやったら、「もう勘弁してよ」って、Dr. チェンは本気で困ってた。 ジェニーはデートの約束があった。Dr. チェンは「大丈夫? 僕はもう少しいてもいいけど」って言ってくれたけど、「ジェニーに駅まで乗っけってもらいなよ。あたしはもう大丈夫だから」って、ふたりを送り出した。 ふたりが帰ったら急に淋しくなって、やっぱりいてもらえばよかったかなって思った。もう絶対ワルイコトしないだろうし。 夜になってフランチェスカが電話をくれた。水曜日のダンス教室のあとの食事のせいで、わたしの胃がまたおかしくなったって思ったらしい。「Dr. チェンがものすごく心配してたよ」って言ってた。ジェニーと来てくれたこと話したら、「いい人だね。いいね、Dr. チェンみたいな男友だちがいたら最高じゃない」だって。 だから誰にも内緒にしてあげる。Dr. チェンは、腕がよくて頭が切れて患者さん思いで奥さん思いの、誰からも評判のいいドクターのままでいなきゃ。 妹に電話した。会いたいと思った。 それから、別れた夫の顔がたくさん浮かんだ。淋しい顔。悲しい顔。辛い顔。やり切れない顔。 苦しくなる。なんで思い出すんだろ。なんで笑顔を思い出せないんだろ。 昨日も今日も、少しだけ胸が痛い。 -
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