くもりときどき、はれ。
そら



 それぞれの、父。

初夏に近いひんやりとした微風がある夜
久しぶりに友達に逢い会食。

新緑に包まれ、
庭にはバラの花が咲いているのを見ながら
夕食を食べながら会話をした。

明日も友達は仕事なので
車で来ているし、9時過ぎには解散したけれど
話をした。


初めて聞く話もあったことには驚いた。


友達といえど人のことを
すべて知っている訳でもないということを
頭の中に言葉で初めて浮かんだ。


彼女も苦労人。
けれども発想も私と同じく卑屈かもしれないなぁと思えた。


彼女の父は今年3月に倒れ、半身がきかなくなってしまった。
よくなっても車椅子に乗れる位だという。

しかし父親とは離婚していて
母と暮らしてきているので、
実質的な親子ではなくなっている。

ところが
父親とは遠くに住んでいる父親の親戚は
近くに居る父の子である友達に世話を任せようと想っている。
それで結構モメているが
結局この若さで父親の面倒を看ることが出来ないのと
出来ないから見ていられず手を出す母…

まるでまた再婚したがっているかのような父。

しかしそれは自分の世話をしてくれる人が欲しいがためである
と彼女はいい、それを本人の前で反対した。


私の父は居ない。
産まれてからお父さんと呼んだことはない。
呼べる人が全く居なかったから。

母親は皆影では言うけれど
不倫しているらしいので
再婚はしていないので父親という存在は
結婚して相手に父がいれば
そう呼ぶ「お義父さん」が出来るかもしれないが
それまでは誰も居ない。


みたことも聞いたこともなかった父の姿を
言葉で垣間見ることが最近増えた。

父は見た目は俳優のように容姿がよく
料理人だったという。

名前も知らない。

ただそれだけが私のお父さんという人だという。


家族はあいつらと父親家族を悪く言うが
それは私にとって苦しいことでもあった。

笑って誤魔化しても。

こういうのは本人にしかわからない気持ちである。

誰にもわかりはしない気分。

いささか、そちらの血をひいているので
悪く言われると自分が何者であるかわからなくなることがある。

だから、産まれなければ良かった人間
親に捨てられている人間と想い
自分への価値がない。


ヒロアキは自分に自信のない私にたいして
いつしかこういった。

「自分のことそういう奴は俺は嫌いだ」

弱音ばかり、自分はダメであるといっている自分を
彼はそう言い放ったことが今でも傷ついている。


私はそうは思えない。


自信がないのにも理由があるから
そういった背景を私は考える。

だから、自分自身のモノサシに人を合わせたりはしたくない。
合わせても合わせきらないから。
違うんだから。

それは人を理解することではないでしょ?

3年前のあの時、
心の憶底で私は言っていたのだと想う。



「でもそら、関わらない方が幸せだよ。こんなゴタゴタに
なんかなりたくないもの、別かれた親と関わってない方が幸せなんだよ」


友達は言った。


「それは、そうだけど…ね」


誰もそういう。


そう、でも自分が何者であるか解らないことが
不安だということもある。
そして、自分が何者であるか知って愕然とすることも、ある。


彼女は後者だ。


彼女は子供を生まない、根絶やしにしてやるという。


その言葉は哀しく思えた。


自分の家、父親の家の血を
もうこれ以上増やしたくないって。


「だけど、自分は自分じゃない
 自分がそうならないようにすればいいだけじゃない」

そんなことで子供を生まないということは
なんて哀しいことだろうと想ったから。


それから彼女は今日こういった。


「私は親を捨てる」


自分は、今まで父親の居ない家で
父親の役目をしているからだ、
だから、父は要らない。


「だけど別な友達に話したら、私の味方はしないんだよね
 父の味方するんだよね、だから自分が親代わりしてきたって
 あえて話したんだよ」


私は最近解らない。

こういう人の考えに対してなんて答えていいのかわからない。


それはそれだからだ。

否定も肯定も出来ないからだ。

彼女には彼女の言い分と理由と根拠があり
父親にも何か意思があるからだ。

ただ、子供に「親を捨てる」といわせるだけのことを
その子の父はしたのだろうなと想う。
でなければ言わないもの。

それは父親が死ぬまで味わうべきことでは在ると思えた。
しかし、自分が父であるならどう想うかということも
私なら考えると彼女には話した。

だから解らないというのが私の考えだった。

彼女は自分の考えが正しいという味方が欲しかったのだろうな
そう想った。

私は父には捨てられたが
父には会いたいとも想わないし
友達のように別れた父から面倒をみてくれと頼まれもしないだろうけど

母のこと
酷い事もあったりして暮らしていけないと想うけれど
捨てきれない。
ちゃんと最後まで看るであろうと想う。

でなきゃ泣くから。

人として、出来なかった。


だけど、何が悪いとか正しいとかいけないとか
そういう判別は付けられない。

それはその形になったのだと想うだけ。

だから、彼女は彼女の道を進めばいいのだと想うだけだった。


そして


私は誰であろうと
何が流れていようと
自分自身に代わりはなく

私を受け入れてくれる人間と出会いたいと願っている。

彼女たちのように
子供を産まないとは、いわない。


産みたいと想う。


人として生きている限り
人を育てることを知りたい。


生きる欲とは望みそのもの。


まだ死ねない。


私は、自分をみていて
父親が凄く悪い人間だったというふうには
どうしても思えない。

嫌なことがあっても
こんな怒られて傷ついても
グレなかったから

血というものがあるのなら
父は変な人間ではないと想う。

それと同時に自分自身にもそう想う。




2004年06月04日(金)
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