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■ 救いの手
「先日、事務局長から婚姻届の保証人を頼まれたんだ」
本部長が今朝、私を呼んだので ホテルの喫茶店で話をしていたら、こう切り出された。
婚姻届には保証人がいるということを、私は初めて知った。
「このまま届けにサインすることが私には出来ない。 先日のそらさんの話を聞いていて、書けないし妻にも嘘がつけない。 今のままではそらさんがいつまでも立ち直れないだろう? 交通事故にもあって、それに事務局長とのこともあって… 私はそらさんが不憫だと想う」
続けて本部長は言った。
「だから、あなたのことを事務局長に話をしようと想ってる」
それは、想ってもいない話だった。
はじめはあなたがどうしたいか?と聞かれた。 私は、始め返答がどうしたらいいのかわからなかった。 何がいいのか判断がつかなかった。
「私は、あんな風な別れ方をされて、 理由がわからないままこのままやっていくのが辛く 1ヶ月経った今でも日常生活の中で 彼のことが出てきて、拭い去れず、 身体が動かないから余計に考えて
本当は、悪いけどころしたいほど憎いです。 彼も、彼女も…
私がこんなになって、私に全て辛いことぶつけて それで自分だけが幸せになろうとしているなんて 私には許せない」
うんうん、頷いて本部長は まっすぐ私をみてずっと聞いた。
目が、涙目になってた気がした。
「そらさんにいつまで連絡してたの?」
ときくので
「11月末位まで、私が連絡をすれば返ってきていました。 会ったのは12月3日。その時の対応は冷たかったです。 でも好きだから待ってられるだろう?と言われたから 私は彼に嫌われたくなかったし、支えようと想っていたので 待つことにしました。でも、12月28日に別れをメールで いきなり切り出されました。その時にはもう同棲していたと 聞きました…理由を全て打ち明けてはくれませんでした」
と答えた。
「別れ話をちゃんとしなかったんだろう? 会ってしなかったんだろう? それで悪いと謝ってないんだろう?
私から、人間として彼に話をしたいと想ってる。 人間としてしていることを問いたいと想ってる。 彼には会わないほうがいいと想う。 このまま会わずに忘れた方がいい、 一日も早く忘れた方がいい」
「なかなか出来ません」
真昼のホテルの喫茶店の人々が減る中 しんとしている中 私は涙を流して話をしていた。
「そうだろうな…」
私は、続けた。
「私は私が今どんな気持ちなのか 相手にしたことを彼はどう想っているのか 私にしたことを平気でそのまま働いていられたのかって聞きたい。 あのまま事故もなくいたら、私は上司から結婚話を きくことになった筈です。 だから、休んでいて、それで聞いて動揺を見られずに良かったと 想いました。 でも、会議で皆がお祝いしている所や 一緒に3名揃って会議に出ているのを あの人は平気でいられるんでしょうか?」
人を傷つけて自分だけ幸せになっている姿を見せ それで申し訳ないと想いもしないのだろうか? それで平気で私に幸せを見せようとしてたのだろうか?
やめる人間だったから、 結婚しても平気だって想ったんだろうか?
「彼がそらさんのお見舞いに全く行くということを口にしなかったのも そういう訳だからいけなかったんだな」
「来るわけないでしょうね…」
打ち捨てておいて幸福になるなんて 私には一生許せない。
だけどこうも想っている。
「でも彼は、多分私にしたことを当然のことだと 想っていると想います。私が彼を信じなかったから こんなことして当然だと想っていると想います」
そんな気がする。
メールで謝っても、謝った内に入らない。
「私の気持ちを彼に伝えてください。 なぜあの人と結婚するにいたったのか 私との事はいったいどうしてあんな態度だったのか その真相を教えてください。 私は知る権利があると想います。 でも本当のことを話してくれるかわかりませんけどね… あの人は、本心は本当に誰にも言いませんから」
「そうか?俺は言うと想うよ…」
こう答えるのは 私の方がいまだに彼を信じていないということなんだろうか?
あの人の人間性というものを、私は信じられない…。
そして皆、あの人たちを私の誕生月に祝うのだ。 私は、こんなに苦しい気持ちでその月を迎え 血みどろなのに。
祝う全てが憎いのだ。
わかろうか?
誰に、わかろうか?
殺したい位に憎い人間。 今からいって刺し殺そうかと何度毎日考えているか。
殺したら私の家族が泣く。 台無しになる。
だから、出来ない。
私だけが報いるのならばいいのだが そうできない。
仕返しは必ずやりたいの。
本部長の話と気持ちは有難いけれど 私の気持ちは あの人たちが死ぬほどに苦しい生活を送って 死んでいくのをみたいだけだから それがないとダメなの。
心を傷つけるって事は 重いってことを思い知ってね。
そうして男を奪ってきた女と そんな女に掴まれた男と その子供
全員恨んでいるわよ。
私の気持ちの救いようは、自分にしかないの。
私の手で殺めるしかない。
人を殺めるつもりはないけれど 心を殺めるのよ。 それが何より人にとって 生きていることが辛いことだから
生きていることの苦しみこそが 最大の傷だということを、私はよくわかってるから これが最大の人への復讐になるということも理解してるの。
幸せになんてなってもらいたくないのよ。
そういう人間が存在する結婚など 幸福など あってはならないのよ。
あったら壊すの。
2004年02月26日(木)
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