梅の気配すらなかった今年遅めの新年会にて。誰からともなく春の企画が持ち込まれた。 「今年のお花見は京都で…!」
普段、こういった企画物の立ち上がりが遅いのだが、期間限定の旅行目的の為に、いつになく迅速に行動をしたのが仇になったようで、まさかこんなに早く桜が咲くとは……!オマケに週末天気予報も悪く、肌寒い雨の中の花見となる。(実際は土曜日と日曜日の昼頃までが雨だったが) それでも、せっかく手配した二泊三日の京都旅行。麗らかなソメイヨシノは散ってしまったが、艶やかな紅しだれ、清廉な白雲のような御室桜は丁度見頃。気を取り直して、出掛けてきた。
ところが出発前からハプニングが。同行の友人一人が急遽キャンセルの連絡。別の者は復路の時間を少し早めたいとの事情。慌てて新幹線やらホテルやら変更の手配。 いつになくトントン拍子に話が進んでいったと思ったら、必ずどたばたが起こる。皆、仲が良いやら悪いやら。だが、この微妙なズレ具合が付き合いの面白いところでもある。 これ以上のハプニングが起こらないよう、全てを滞り無く終えるためにワタクシがしたことは、旅行の企画・手配の段階で何もしなかったことだ。つまり、手配の変更等ワタクシはいっさいしていない。(他に、「今日はここに行きたーい」とか「どうしてもこれが食べたい!」と発言しないこと。)
さて、出発前にこれだけの出来事が起きれば、禍福は糾える縄の如し、あとは良いことが続くはず。と思ったのが甘かった。最大の事件は出発当日、新幹線の発車十五分前に起きた。 発車三十分前に東京駅で今回の幹事と待ち合わせし、一緒に新幹線へ乗り込むこととなっていた。が、待ち合わせを五分過ぎても、十分過ぎても奴は来ない。さすがに心配になり電話を掛けた。幹事役の皐月ちゃん。こやつは遅刻癖が有るから不安だなあ。駅に着いているけど迷子になっている、ていうのならまだ良いんだけど……。 「ごめ〜ん、今まだバスの中。もうすぐ着くよ。何だかすっごいバスが遅れちゃって。それからふるふるさんが遅れるって。朝に連絡があった」絶句……時間厳守の時にバスを使うな!おまけに、ふるふるさんが出発時間に間に合わないとは!?どうしたのだ! ともかく奴が来なければワタクシもどうにもならない。どうにか間に合ってくれるよう祈るばかり。すると、本日の同行者、天祥から電話が掛かってきた。 「ごめん、まだ東京駅に着いてない。ひょっとしたら間に合わないかもしれないから、先に行ってて」再び絶句……。おっまっえっらっはー! ああ、もう!やっぱり面倒くさがらないで先に切符を受け取っておけば良かったか!それとも、モーニングコールを入れて、バスを使わずに電車で来いと言っておけば良かったか!?
あと、五分。東京駅の八重洲南口をウロウロ。「うわ〜、ごめんねぇ」皐月ちゃん到着。ふたり、ホームへ向かって走り出した。するとワタクシの携帯が鳴る。天祥だ。発車まであと三分。 「いま、ホームに着いた!何処にいる?もう、新幹線に乗った?」 「いま、皐月ちゃん拾った。ホームに向かってる!いや、着いた。乗れ乗れー!」 新幹線が動き出した。 三人は座席でようやく顔を合わすことが出来たのだ。 「いや、もう。いつもならもっと早く着くのに、道が混んでてさ」 「ねえ。電車で来ると乗り換えが面倒だからバスに乗ったんだけど、これなら電車の方が早かったよ」 ……出発の朝にこんなスリルは要らないのだよ、君たち。 「ところで、もう一人。ふるふるさんは?」 「出発には絶対間に合わないから、先に行ってくれって。後から来るって」 「お仕事が忙しい人だからなあ、大丈夫かな?」 「昼過ぎには京都に着くはずだから、ホテルで合流して今日の予定を進めようよ」 こんな感じで二泊三日・京都お花見旅行の幕は開いた。
旅行中、今まで行った事のないところを中心に行こうと計画を立て実行。 今回出掛けた場所で一番気に入った場所は、上賀茂神社。 鳥居をくぐってすぐ右手にある大きなしだれ桜が見事。木々と川の音が心地よく、相性がよい場所、気が整えられるっていうのはこういう気持ちなんだなあと実感。それから、神社のすぐ側にあるお店の焼き餅も美味しくて幸せの一時。 逆に、どうも落ち着かなかった場所は宿泊したホテルの部屋。起きてみんなと騒いでいるときには大丈夫なのだが、いざ寝ようと灯りを消すとどうもざわざわする。何処がざわざわする。二晩とも眠りが浅いまま、朝を迎えていた。綺麗なホテルだったんだがなあ。
そうそう、肝心の桜だが、やはり遅咲きのものしか残っておらず、少々寂しい場所もあった。それでも、春の空気と共に花を楽しんだ。それ以上に食の充実度が高かった。お菓子も食事もお酒も。人との交流も心地よかった。京都のパワーを取り入れて、美味しいお土産を手に帰宅。大満足。
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