きょうは推薦入試で、昼前には入試が終わってしまった。 だから、昼食時から2時ごろまでに、残りの半分を読んでしまった。
ロードショー中の映画の原作本だが、何となく買って読み始めた。 楽天ブックスで、鑑賞券の懸賞付きだったせいでもある。 読み始めて20ページほどは、翻訳文が少々薄ぼんやりしているせいもあり、 おもしろそうな期待がもてなかった。 ところが、小旅行に出かけようとしているアリーの描写に入ってから、 だんだんと、中断するのが残念なほど引き込まれ始めた。 このアリーの小旅行によって、 ノアとアリーの15年ほど前の忘れられない恋が再燃する。 その両者の心の動きが細かく描かれ、なかなか緊迫感が漂っている。
その物語は、アリーが婚約者に会いに行ったところで終わってしまう。 そして、現在は、ノアは80歳になっている。 居住型看護施設で、自らも重病を患いながら、 妻のアリーに毎朝彼らの(上述の)出会いの物語を読み聞かせている。 アリーはアルツハイマー病が進行して、もう記憶を失っているのである。 読み聞かせられる物語は、架空の、ノアの作品か何かだと思っているし、 ノアに向かって「ところであなたは誰?」と尋ねる状態である。 けれども、病状の進行の割には意識がしっかりしていると言って、 医師や看護士の驚きの的である。 しかも、1日を共に過ごした末に、ノアの名を呼んで愛を語ることもある。 ところが、そんな奇蹟もすぐに彼女を襲う幻覚が妨害してしまう。
韓ドラでおなじみになった、ぐちゃぐちゃした波瀾はない。 結ばれたと思ったら重病で死んでしまうなどという残酷さもない。 唯一あったのは、アリーが婚約を解消しなければならなかったことだけだ。 そして、アリーとノアは40年以上結婚生活を続け、4人の子どもを育て、 アリーはノアに励まされて画家としても大成する。 幸福な生涯だったと言ってよい。 彼らの現在の悲劇は、老後に襲ってくるいくつかの可能性の1、2に過ぎない。 アリーの病気は諦めざるを得ないような種類のものだし、 もうすでに十分幸福な結婚生活を送ってきたと言ってよいだろう。 しかし、80歳のノアは、自らも持病と闘いながら、あきらめない。
彼ら自身の物語を読み聞かせるというのは、 まだ記憶を失いきってなかったころの、アリーの依頼でもあったようだ。
「あなたへの愛は尽きません。深く愛しているから、病気が進行しても、 あなたのもとに帰る道を見つけると約束します。 そしてそこに、この物語が登場するのです。 わたしの記憶がなくなって、途方に暮れたり、寂しがっていたりしたら、 このお話を読んでください。あなたが子どもたちに話したように。 そうすれば、きっと自分の話だとわかります。 たぶん、わたしたちはまたいっしょになれます。 あなたを思い出せない日があるからといって、わたしを怒らないで。 そういう日が必ず来るのですから」
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