電車男を読み終えた。 くだらんことばっか言っている掲示板なのだけれど、何か胸が熱くなる。 知らず知らず、読んでいる自分も、この掲示板の客たちと共に、 電車男の恋の成就をハラハラしながら見守るはめになる。 エルメス嬢も、実に魅力的なヒロインである。
主人公はもちろん電車男なのだが、電車男の恋の成り行きは単調である。 最初こそ、電話もかけられないでびくびくしているが、 ひとつ壁を乗り越えたら、あとは何の波瀾もなく進展して行く。 その話だけで本にしてみたら、数十ページの絵本仕様で足りそうである。 何がおもしろいかと言えば、その報告に反応し、その報告を心待ちにする 掲示板の他の書き込みである。
きょうは空き時間にも読んでいたのだが、 思わず笑ってしまうので、誰もいない会議室で読まねばならなかった。 これを読んだ直後に、授業で「こころ」など扱えそうにないので、 「こころ」のための心の切り替えをするために、早めに中断したりした。
それにしても、ホントにこれは2ちゃんねるそのものではないか。 この作者は画期的な発想だけでなく、卓越した構成力を持っているようだ。 読み進めれば進めるほど、その感を強くし、感服するばかりだった。 ところが、読み終えて、作者紹介を読んで、唖然、、、だまされた。。。 作者名と思ったのは、作者名でなくて、便宜的な呼び名に過ぎなかった。 2ちゃんねるからのコピーなのだそうだ。 昨日も書いたように、私はてっきりこれを新しい試みの小説として 読んでいたので、がっかりしてしまった。
けれども、そうと知ると、また新たな感慨が心の中で膨らんでくるのである。 これらの親身な応援やアドヴァイスや、祝福の反応などは、 フィクションではなくて、実際にあったことなのだ。 顔も名も知らぬ人々の交流が、奇跡へと導いて行ったと言える。 彼らの激励がなかったら、電車男は、最初の電話もかけられず、 そのまま、エルメス嬢に会うこともなく終わっていた可能性が強い。 そうして彼らは、2人の恋の成就を見届け、大いに祝福した後、 大イヴェントを成し遂げた集団さながらに、感動を分かち合って解散する。
インターネットの世界、、、とりわけその掲示板という機能は、 遠く離れて暮らす、生涯おそらく会うことはないであろう人々の対話を 可能にしたばかりでなく、例えば、電車で隣同士に座りながら まったく赤の他人であるような2人が、その2時間後には、 親身になって語り合うようなことも可能にした。 まったく不思議な世界である。 そういう出会いが、本物かまがい物かというような議論は置いておこう。 ただ、それが、身近な友人との交流以上の力を持つこともありうる、 それだけは確かに言えそうである。
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