講習会が終わると我先にとみんな退散し始めた。 たぶん、昨日の帰りのバスの混みようと渋滞に勝とうとしたのだろう。 私もそうできればそうしたかったけれど、 みんなが同じことを考えているなら絶対勝ち目はない。 ただでさえ出遅れた上に、足が痛いので早く歩けず何人もの人に追い抜かれる。 バス停にはもうバス3台分ほどの人が並んでいて、 私の後ろに近づいてきた人が悲鳴をあげていた。 これでは、今乗客を乗せているバスに乗れないのはあたりまえで、 この次の、昨日と同じバスに乗るのも難しい。 きょうは、高校生向けのオープンキャンパスの日らしくて、乗客も昨日より多いのだ。 喫茶店を探してもいい、というくらいの気持ちで、大学の門を出た。 で、出たところで、ふと思った。 道路は渋滞している。昨日は、停留所の2区目までに10分以上かかった。 あんなところで並ばなくったって、先の停留所で乗せてもらえばいいじゃないか。 ひとつ先の停留所に達する前に、さっきのバスに1度追い抜かれたけれど、 あわてる必要は何もない。 バスの中を見ると、予想以上に空いている。 どうしてあれだけしか乗せずに発進したのか、不思議だ。 すぐにそのバスを追い抜いて、一つ目の停留所に着いたけれど歩き続けた。 渋滞の中、バスの中で立っているよりも、きょうは涼しいから外を歩いた方がましだ。 二つ目の停留所で待って乗せてもらって、後はスイスイと昨日よりうんと早く家まで帰った。 めったに自慢できることはないけど、きょうの賢明な判断は自慢したくなる。 急ぐなら廻るのが一番、の典型的な一例となるだろう。
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