雨は終わると思った  2006年03月30日(木)




好きな人がいました。
とてもとても好きで、憧れていました。
認められたい、と何度も思っていました。


その人の書く文章に羨望し、尊敬し、嫉妬し、そしてなにより愛していました。
私が牛子しか読めないという事実に一番悲しんだことはその人の書く牛子以外のカップリング小説が読めないということでした。
牛子のお陰でその人に出会えたのに、牛子への愛で私はもう一つの愛に泣くほど悔しくなりました。


その人の思考、物語、価値観、文字にどれほど影響されたのか。
真似ではないか、と指摘を受けたことすらありました。それでも、私はその人になりたかった。
私が書きたいものとは、まさにその人が書くものでしかなかったから。


押しつけがましい幼い身勝手すぎる暴力にすらなりえるこの感情をいつでも暖かい言葉で受け入れてくれました。
いつだって、跳ね返されたって仕方がないというほど私は幼い表現で感情を伝えようとしていた。
けれども、その人は「ありがとうございます」といってくれました。




好きな人がいました。
とてもとても好きで、憧れていました。
認められたい、と何度も思っていました。




その人の文章ではなく、私自身の文章で。
私にしかできない表現で。
私にしか作れない物語で。




まだ、まだまだです。まだまだ、届かない。まだ、こんな幼い私では。
いつか認めて貰えるよう。その人から、私の書いたものを認めて貰えるよう。
なんて身勝手な幼い考え方だけれども。




いつか、いつか。
私の中の、希望です。






その人は、かつて香草と呼ばれていた人でした。







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