たりたの日記
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2016年12月26日(月) 「イギリスのナイチンゲール」を演奏したクリスマス



久しぶりに、ほんとうに久しぶりにここを開く。今日はそれが必要な気がした.
今日は12月26日。日本に於いてはクリスマスが終わった翌日。キリスト教国に於いてはこの日から12日間続くクリスマスの第2日目。
そして、私自身にとっては、私だけのクリスマス、そんな気がしている。心なしか、昨日までのクリスマスツリーやクリスマスの飾りが新鮮に映る。去年のミニシクラメンに沢山花が開いている事にも気づき、テーブルの真ん中に持ってくる。大きなマグカップにコーヒーを淹れ、アドベントの1日目からクリスマスツリーの下に置いておいた、とっておきの可愛らしいクッキーの缶を開く。何と平和で心穏やかなクリスマスの朝だろう。

そう、このクッキーは11月27日、杉並にある養護施設で小さなコンサートをした時、その会を企画したKBさんからお礼にといただいたもの。文学ゼミの仲間のKさん、KBさん、そして彼らのピアノの先生の演奏にリコーダーで参加させていただいた。みんなで集まって練習したり、選曲のことでメールのやり取りをしたり、そしていつもの事だけど、演奏会が終わるまでは他の事に手がつけられず、練習してもしても不安や緊張が続く、そして終わってみれば、あぁ、良い機会をいただいたな、楽しかったなという気持ちが残る、そんなコンサート。

昨日もそうだった。東久留米の「聖グレゴリオの家」での子ども達によるオペレッタ「青い鳥」の中で青い鳥となってリコーダーを吹くという役目。
リハーサルの午後3時に1時間ほど早く、まだ暗い礼拝堂に入り、クリスマスツリーの脇に譜面台とライトを用意し、音出しをする。この礼拝堂は音がとても良く響く。それだけに息のコントロールが難しい。予定していたルネッサンスモデルのリコーダーは素朴で澄んだ音がするけれど、響きすぎる気がし、リハーサルはグラナディアのリコーダーで吹くことにする。こちらの方がノイズがなく、安心な響きだが、小鳥の素朴な感じはルネッサンスモデルの方が良さそう。客席が埋まると音が丁度良い具合に吸収されていることが分かったので、本番はルネッサンスモデルで演奏することにした。

オペレッタの中で子ども達の歌に合わせて吹く分にはとても楽しく軽やかに吹けるのだが、問題はリコーダーのソロの部分。「青い鳥、見つけた!」と子ども達が少し高い位置にある礼拝堂の入り口に立つ私を指さし、そこから、私がファン・エイクの「イギリスのナイチンゲール」を吹きながら、子ども達のところまで歩いてきて、そのまま続きを終わりまで演奏するという場面。この時会場は少し暗くなり明かりが私に向けられる。ここでコケたら子ども達のオペレッタが台無し。私だけのミスでは済まない。何とか間違えずに最後まで演奏を終えなくては....
その気持ちが強かったからか、あと1小節で終わりというところに来てミスってしまった。普段ならけっしてミスしない場所なのにと心はしょげる。けれど聴いていた方にとってはそんな大きなことではなかったようだと胸をなでおろした。まずは無事お役目は果たすことができたようで、ほっとしたような、ミスや緊張が残念で、これが自分の実力、もう人前でソロなどしない、といった複雑な思いでの帰り道だった。

予測不能なミスを免れられない。これが今の私の実力ではあるけれど、録音したものを聞きかえすと、あの礼拝堂に自由に飛び回る小鳥の感じは出ていると思った。気分でテンポも速くしたり、ゆっくりしてみたが、小鳥が子ども達に話しかけている感じも出ている。私の緊張とはよそに、笛の音は、またこのファン・エイクの曲は自由に音楽を奏で、このオペレッタの中でちゃんと鳥の役を演じてくれたような気がしてきた。うん、そういうことにしよう。

何よりも、この聖堂でリコーダーを吹けた、その事こそが神さまからの大きなプレゼントだとしみじみ思う。2年前、この礼拝堂を初めて訪れた時、ここでリコーダーを吹くとどんな音がするんだろう。ここでファン・エイクのクリスマスの曲や讃美歌をモチーフにした曲を吹くことができたらどんなに良いだろうと夢見た。けれど2年前はとてもここで演奏できるようなレベルではなかったのだ。そして神さまは少しずつ、導いてくださった。去年の自由が丘のカフェでのライブ、折々のカフェ寧の中庭でのライブ。昔から尊敬し憧れていた吉澤実先生のリコーダーレッスンを受けることができるようになったこと、これも念願の都留音楽祭の参加。こういうひとつひとつの事すべてがお導きだったと、この4年間を振り返る。

そういえば、昨日演奏した「イギリスのナイチンゲール」この曲との出会いは、吉澤実氏の「クリスマス パストラーレ」という1枚のCDを通してだった。このCDは1993年にルーテルアワーから出たもので、リコーダーが奏でる澄み切っていて、静かな曲はパストラーレというタイトルに相応しく、大のお気に入りのCDとなった。24年も前のこと。そして毎年アドベントに入るとこのCDを一日中かけ、また何人もの方にクリスマスプレゼントとして差し上げてきた。少しもの悲しい「いまこそきませ」に始まるこのCDの中に、ソプラノリコーダーのソロで演奏されている「イギリスのナイチンゲール」があったのだ。
4年前のクリスマスに夫から木製のリコーダーをプレゼントしてもらい、まず頭に浮かんだのはこのクリスマス・パストラーレの曲だった。検索して、「イギリスのナイチンゲール」の楽譜が見つかった時には飛び上がりたいほどの喜びだった。そして、17世紀の盲目の音楽家、ヤコブ・ファン・エイクの事も知り、楽譜を見つけては夢中で吹き、CDを聞いた。ユーチューブを開けば、世界中のファン・エイクのファンがプロ、アマ問わず、様々に演奏をアップしていることにも驚いた。そうしてわたしも駆け出しの分際で、この曲をチャーチコンサートや子ども達のイベント、カフェでのライブで吹くようになった。公園ではこの曲を一番たくさん吹く。というのも、周囲を飛び回っている小鳥たちが反応して囀りを大きくしてくれるからだ。まるで小鳥たちとのコラボ。そう、この曲のお陰で、私はいろんな公園の小鳥たちとコミュニケーションができるようになってもいたのだった。

曲との出会い、人との出会い、場所との出会い、そんな出会いの積み重ねの中での、昨日の演奏ではあったのだ。

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たりたくみ |MAILHomePage

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