たりたの日記
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2016年06月25日(土) 玉川温泉へ

この2月に胆管がんの手術を受けた後、秋田県の玉川温泉のことを聞いた。湯治場として古くからよく知られている温泉で、リュウマチや癌に効くらしく、今でも大勢の病を持っている方々が治療目的で集まってくる温泉ということだ。

秋田にはこの「たりたの日記」を通じて知り合った、15年来の友人Sがいる。彼女は彼女でひどいリュウマチに悩まされている。退院したらSを誘ってその温泉へ湯治の旅をしたいものだと思っていた。そして、その願いが実現したという次第。切符も宿も、Sが手配してくれて。

この日の朝、10:46発の秋田新幹線こまちに乗り込み、田沢湖着13:10。そこでSと合流し、玉川温泉行きのバスに乗り込む。メールや電話でのやり取りは続いていたものの、Sと会うのは3年振り。間に大きな出来事もあったから、再会は感慨深いものがあった。生きて会えてよかったと。

予定ならば、バスは玉川温泉に14:42着、1時間20分ほどの乗車時間なのだが、バスに揺られて30分もすると、腸の具合がおかしくなった。思いの他寒く、スカーフを膝にかけたり、カーディガンを羽織ったりしたものの、身体が冷えたらしい。一旦この状況になると、止められない。このままバスに乗っていては大変なことになる。手術の後の内臓の不具合はこういうところに現れて時々、スリリングな事態になる。次のバスまで1時間は待たねばならないが、Sと共に途中のバス停で下りることにした。

バスを降りたところは玉川ダムというところで、美しい湖を眺める公園になっており、そばのカフェは閉まっているものの、側にはきれいな公衆トイレがあって助かった。出るものが出てしまえば、後は何でもない。Sからはリコーダーを持ってくるようにと言われていたから、バッグにはアルトとソプラノのリコーダーと楽譜が入っている。景色の美しい、誰もいない公園は笛を吹くにはもってこいの場所だ。ベンチに楽譜を立て懸け、リコーダーを吹いた。
ヤコブ・ファン・エイクの讃美歌をモチーフにした曲などを数曲。近くの鳥もコラボしてくれ、木々の緑と湖の青は音を豊かにしてくれ、Sも音楽を喜んでくれた。次のバスを待つまでの時間は思いがけない素敵な時間となった。

午後4時頃、ようやく玉川温泉に到着。さっきまで降っていた小雨も都合よく止んだようなので、さっそく岩盤浴ができる場所へと探検にでかける。もくもくと硫黄の煙が上がっている噴気孔の側を歩いていくと、何ともワイルドな火山の風景が現れた。秋田県が管理する一周約1キロの玉川温泉自然研究路が整備されていて、その一角に、岩盤浴ができるようテントが三つ張られている。テントの中に二人分の空間を何とか探し、持ってきたバスタオルを敷き横になる。他の人たちは、ゴザを敷き、身体をすっぽり覆うタオルやシートなどをかけている。かなり熱い岩盤で、冷えた身体が心地よく暖められた。ほっとした気分でSと積もる話をしていたら、ここは治療の場所で瞑想している人もいるのだから話はしないようにと注意された。
その通りです。ごめんなさい。
確かに、レジャー感覚の温泉場とは違う。深夜の登山を待つ山小屋のような、あるいは何かの修行場のようなそんな空気があった。そしてそれはわたしの好きな空気でもあった。

翌日からはゴザや保温シートを売店で買い、本格的に岩盤浴をするのだが、この時点では、見ること、聞くこと、びっくりのことばかりだった。


たりたくみ |MAILHomePage

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