たりたの日記
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日記の中を検索しながら探し物をしていたら、 2003年の2月10日から15日まで毎日綴っていった、7つの愛のソネットがでてきた。
それぞれの愛のカタチをシェークスピアのソネット(14行詩)を真似て 書いてみたのだった。
しばらく、その時に立ち返ってみた。 そこにある文章も、その後に綴られた詩も、けっして過去のわたしというわけではなかった。 その時のわたしは変らずにわたしの中に生きている。 明日のステージのためにも、わたしの内なるエナジーを総動員したいところだったので、 良い再会だった。
詩の部分だけ載せておくとしよう。
< 愛のソネット 1> 魂から魂へ
わたしがわたしの言葉を愛するように わたしはあなたの言葉を愛する わたしがわたしの時を愛するように わたしはあなたの時を愛する
お互いを見つめ合うのではなく 遠いかなたに目を注いで あなたとわたし、異なる空間で呼吸し それでも共に生きている
あなたがあなたの音を愛するように あなたはわたしの音を愛する あなたがあなたの場所を愛するように あなたはわたしの場所を愛する
ある時、それは身を切るような痛みを伴うとしても 強靭に愛し続けていくことをわたしたちの魂は知っている
< 愛のソネット2 >
Anniversary
愛を探した日々があった 進むほどに道は狭く、迷路に閉じ込められるのはわたし 愛を捕えようとした時があった 手にしたものは抜け落ち、独りでたたずむのはわたし
ある日、ひだまりの中に愛は座っていた 「少しだけそのひざを借りてもいいかしら」 初めて眠りを知った者のようにわたしは眠った 探さなくても愛は変わりなくそこに居続けた
ある日、わたしの体の中で愛は動いた 「もう何も欲しいものはないわ」 生き始めたばかりの命にわたしはわたしを捧げた 捕えようとしなくても愛はいつも腕の中にあった
一人が二人になり、三人は四人となって命は育まれていった この豊かな実りに感謝を捧げよう Anniversaryの今日
< 愛のソネット3 >
とらわれ
愛はときおりデュオニソスを伴ってやってくる その香りは甘くあらがうことはできないゆえ 見えない力にただ引き込まれてゆく 足は地上を離れ心は果てもしらぬ空をうつろう他ない
愛は人を命からひきはがし洞窟の中に閉じ込める 歓びと苦痛はくりかえし訪れ 目は何も見ず、耳は何も聞かない そして死は喉元に鋭いナイフを突きつける
どうかここからわたしを出してください この死の淵から生還させてください この試みに会わねばならない理由は何ですか 人は思わず彼方へ向かって叫ぶ
彼方へ向かった声を聞くものがそこにいる 人はその叫びの故に死から命へとまた移される
< 愛のソネット4>
その愛
はじまりは言葉だった 男は女の綴った言葉の海へ恋に落ち、女へ言葉を届けた 女は言葉を受け取る、そこにある優しさも情熱も 日に何度も届く手紙、二人の間に降り積もりゆく言葉
5年が過ぎた時、これから人生を始めようとする若者は これから人生を閉じようとする老女のもとへと向かった 言葉ではなく手で愛撫し 言葉ではなく目で見つめる
男と女は愛し合い、また傷つけあう 歓びと苦渋、高揚と絶望、愛とはそういうもの 女の口は物語を再び語り 男はその声を指先で打ち込み文字へと変えた
その愛の話を人々は読み継いでゆくことだろう その愛の形をわたしも今日、深く心に刻もう
* 映画「「デュラス 愛の最終章 」を観て
< 愛のソネット5>
チョコレート応援歌
バレンタインデーにチョコレートをあげるのだったら 手作りにしましょうよ 上質のチョコレートを使うのよ なめらかでけっして甘すぎないものを
チョコレートはあなたの心の熱さで溶かす 想いをそこに混ぜながら 溶けて流れ出す前に考えておくことを忘れずに 作りたい愛のかたち
ラッピングはあなたを表す色と形で カードにはあなたの心から取り出した言葉を添えてね 渡す時にはきりりとした目を向けて アイ ラブ ユー と テレパシーで伝える
それで「ホワイトデーには君が作ったクッキーがいいわ」と言ってみる 男の子にもレッスンのチャンスをあげなくちゃ
< 愛のソネット6>
愛を歌うあなた
ビョーク、あなたはわたしを知らないにしても あなたはすでにわたしの中に棲みついている それは音、それは言葉、それは息づかい あなたがどれほどこの世界を愛しているか、それが見える
アイスランドという土地を訪ねたことはないにしても その土地の空気はすでにわたしのなつかしいもの それは岩、それは氷、それは草原 どんな命とも、どんな自然とも結びつくあなたの不思議
あなたの歌はすべての命へ向かう愛 だからとても近い、命のみなもとと 愛とはもともとの自分に帰ること 自分の心の声に聴き従うこと
創り出す行為とはこうしたこと ひとりのあなたという存在が広がり続けていくということ
< 愛のソネット7 >
時空を超えて
2000年を遡り あなたの時をわたしは生き 2000年を超え わたしの時にあなたは生きる
はてしない命のひろがり わたしの外へ また内へ 今をつきぬけて つらなる 永遠へ
あなたという愛のみなもとに あなたという命のみなもとに 抱かれるという 至福 生きてゆける
繰り返し問いつづけるあなたの眼差しに 挑むように返すわたしの愛
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