たりたの日記
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ステージの匂い
ステージには匂いがある。 日常にはない匂いだというのに、それが不思議に懐かしいのは 本番前のステージの気分がとりわけ強く 記憶に刻印されているからなのだろう。
空っぽの客席の上には、けれど 今にそこを充たす熱気の兆しが漂っていて その照り返しを受けて心の振幅は大きくなる。 時間の先っぽに、つま先立ちで立っている。
開演のベル、に始まる太鼓の轟き。 紫色の衣が客席を駆け抜け舞台に上がる。 その中を走り、その風に心を奪われ、 瞬間、踊ることを忘れてしまった。
踊る時には足の裏にエネルギーを通し 波に飲み込まれないように。 けれど綱をしっかり握っていたつもりなのに 時に波に乗り遅れ、動きはバランスを欠いた。
ステージで繰り広げられる様々な踊り。 わたしの出番は10回。 舞台に走り出て、走り去り 衣裳を取り替え、再び袖へ。
踊りも歌も、ギターの音もバンドの演奏も その時、はっきりと空気を変え、 客席とステージとは交歓し 熱は混ざり、溶けてゆくものを見た。
2時間のパフォーマンスは凄い速さで駆け抜け、 音が止み、再び空っぽの客席。 スーツケースに衣裳を詰め込みながらそちらを見れば、 そこには熱気の名残が漂っていた。
< M's Party 春色和舞 2007年2月24日 埼玉芸術会館 小ホール> 写真撮影 mG
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