たりたの日記
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2007年02月04日(日) |
『読夢の会』新春特別対談 |
明大前のキッド・アイラック・アート・ホール へ行く。
『読夢の会』新春特別対談「正津勉(詩人・父)VS中村真夕(映画監督・娘)」が今日の目玉なのだが、対談の前に、中村真夕監督作品「ハリヨの夏」参考上映があり、対談の後には、正津勉氏の「おやすみスプーン」の朗読と、青木裕子さん(NHKアナウンサー)の朗読 林芙美子著「風琴と魚の町」を聞くという超豪華版の朗読会だった。
映画、対談、朗読、どれも人の声によって伝えられるメッセージだ。 日頃、活字を読むことでしか味わっていない文学作品が人の声を通して伝わる。それは活字とは違うひとつの世界。 声の持つ力、人の声を聴くことの心地よさを想った。
「ハリヨの夏」はこれで三回観たことになる。その風景も人物も、とても親しい存在になってしまった。映画は不思議だ。何度観ても、前に見ていなかったところが見えてくる。 今回は監督の中村真夕の素顔、それも父親を前にする娘としての顔を観ることができたことが良かった。二人とも力の抜けた、その自然体がとてもいい。様々な葛藤を経て、いろいろな過程を通り越し、潜ってきた後のいい関係なのだろう。 いい父娘だな・・・暖かい気持ちになる。
青木裕子さん(NHKアナウンサー)の朗読 林芙美子著「風琴と魚の町」は力のある生き生きとした朗読で、お話の向こうにしっかり映像が浮かんでくるのだった。林芙美子は読んだ事がなかった。活字で読んだとしたら、これほど生き生きとしたストーリーとして受け止める事ができただろうか自身がない。声の持つ力、その人の表現力に助けられてその作品を味わうことができる。
気持ちにしんと沁みこむような会だったからか、その後のパーティーの雰囲気はとても和やかだった。静かに打ち解けていて、緊張やとげとげしいものが微塵もない空間だった。初めてお目にかかる人も多かったのに、前から知っているような親しみ深さがあった。日頃あまり飲むことのないワインをグラスに注がれるままにずいぶんたくさんいただいたような気がする。 キッド・アイラック・アート・ホールの地下のカフェ、本と絵に囲まれたその空間はまた訪れたい場所だった。
青木さん、中村真夕さんと言葉を交わすことができて幸いだった。そして、わたしも聴くだけではなく表現する者でありたいと思った。 語り、芝居、ミュージカル、歌、ダンス、有り難いことに、表現させていただける場所は確かにいただいてきた。これほど未熟であるにもかかわらず! でも、これこそが<わたしのもの>といえるような表現を突き詰めないまま極めようとすることのないまま、憧れのようなものばかりでやってきたような気がしている。
その昔前、日々お話を覚えて語ることをわたし自身のライフワークにしていたことがあった。こども達がまだ小さかった頃、近所のこども達を集めて家庭文庫を開いていた頃のこと。 我が家の小さな2DKに小さな子ども達が20人ほども集まり、わたしや仲間の語るグリム童話や日本の昔話を聴いてくれた。 考えてみれば、毎週木曜日の午後は、我が家の2DKが小さな劇場となり、一生懸命な顔をして聴いてくれるこども達を相手に、わたし達は精一杯のパフォーマンスをしていたのだった。 覚えて語った話や読み聞かせた絵本は数知れない。
ここしばらく、何かと朗読に縁がある。ダンスのステージで詩を読ませていただいたり、どこからともなく朗読会のお誘いが来たり、知り合いの音楽家から、音楽と朗読のコラボをやらないかと誘いがあったりという具合だった。 わたしの表現することをひとつ決めるとすると、いろんな意味で朗読という気がする。時折、ひとりで朗読する他は、自分からは何も動き出していないけれど・・・ そういう意味では昨日の朗読会で、ぽんと背中を押されたような気持ちがする。
今日は永瀬清子の詩を朗読しよう。
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