たりたの日記
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山の紅葉の時期は短い。 それは予想を超えていた。 燃えるような黄や赤に彩られた渓谷を、秋が終わるまでに一度見ておきたいと願っていたのだが、出遅れたようだった。
けれど考えようによっては、この渓谷との良い出合い方だったのかもしれない。 少なくとも人であふれかえっている山道というのではなかった。 あたりは、ようやく山深い渓谷の静けさを取り戻しつつあるようだった。 豪華絢爛の華やかさはなかったが、秋のなごりと冬の兆しを秘めた渓谷は 日本人の大切にしてきた感覚のひとつ、わびとかさびの世界を思わせる風景に出会った。
おおよそ落ちてしまった木に数枚残った美しい黄色の葉。 葉を落としたばかりの細い枝枝ばかりの木々の中で、そこだけ 赤く、あと一日か二日の命を留める真紅の紅葉葉。 そこ、ここに漂っている儚さ。
そして、木々の、そして訪れる人々の変化の中で何百年も変らずその音を響かせてきたであろう岩走る水、滝の力強さ、清らかさ。
どの自然に出会っても、そこから学ぶものがきっとあるように、この渓谷との出合いもかけがえのないものだった。 きっとここをまた歩くことになるだろう。 新緑の頃か、あるいは真夏、そして紅葉の時期ならば、思いっきり朝の早い時間に。
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