たりたの日記
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子ども達が小さかった頃、よく読んでいた絵本に「おばけのてんぷら」というゆかいな絵本があった。うさこちゃんがてんぷらを揚げるのだが、いろんなものを次々に揚げながら、自分の眼鏡まで揚げてしまって、お陰で、良い匂いにつられてやってきたおばけがうっかり天ぷらの衣の中に落っこちてしまったのに気が付かず、おばけは衣をまぶされ、揚げられそうになるのだが、なにしろおばけだから、油に落っことされる前にすっと抜け出したというお話。
そのうさ子ちゃんが「てんぷらは揚げたてがいちばんおいしいのよね」なんていいながら、てんぷらを揚げるそばから食べている。つまり台所で立ち食い。 そうだろうな、それが一番美味しいに決っている、そう思いながらも、わたしはなぜかそれを実行したためしがなかった。どうしてだろう。子ども達が小さい時は、そんなお行儀の悪いことをすれば、子ども達に示しが付かない。それに料理は家族のためのものという健気な主婦意識もあったのかもしれない。ちょうど、料理人が味見はしても、作る側から食べたりはしないように。
こんなことを思い出したのも、あの「おばけのてんぷら」のうさこちゃんのまねをようやく果たしたからだった。Sさんのお宅でいただいた揚げたての山ウドの天ぷらの味が忘れられず、翌日の昼間、お土産に持たせてくれた山ウドをさっそく天ぷらにした。そして、揚げる側から塩を振り、焼酎のお湯割り(芋焼酎、火唐)を片手に食べたのだった。あぁ、今思い出しても、そのおいしかったこと・・・
山ウドを10本ほど、葉も茎も全部揚げたのだから、わたしがいくら食べてもまだお皿に山盛りにあり、わたしが仕事に出ている間に戻って来る同居人が一人では食べきれないほどあった。
それにしても山ウドの強い香りはなんとおいしいものだろう。2日間に渡って山ウドの天ぷらを大量に食べるなどという贅沢は、今後もうないかもしれないと思うと、とても貴重な食体験をしたと思う。 Sさん、ほんとにありがとう。
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