たりたの日記
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あいにくの雨だった。 ブラウンのインド綿のロングドレス、民族衣装っぽいその服を着るつもりだったが、雨の中、すそまであるスカートをはいて駅までは歩けない。急きょ、いつものパンツルックに変更。
結婚後、8年間住んでいたK市へはバスと電車を乗り継いで行った。 K市の駅前、懐かしいような気もするし、ずいぶん距離のある場所のような気がする。
中村勇さんの陶芸展が開かれている美容院の2階のフリースペースには所狭しとたくさんの作品が展示されており、動物をモチーフにした作品は力強く、生きる力に満ちていた。 この展示会場での朗読パフォーマンスの話しがあった時に頭に浮かんだのがグリム童話の「熊の皮を着た男」だった。
マオさんの司会で朗読会が始まる。雨のためかいらっしゃる方は少なかったが、とても静かで暖かい空気が流れていて、どの方の朗読も一言一言が心に染み渡っていくようだった。井出さんの紙芝居を聞くのは初めてだったが、岡田なおこさんの書いたバリアフリーの紙芝居「ゆっくり、ゆっくり」をみごとに演じられていた。この紙芝居は私も買って、教会学校でやったことがあったが、障害を持つ女の子のところをどう読むのか分らなくて、この紙芝居のメッセージを引き出せなかったような気がする。井出さんが障害を持つ方々の側に立っているが故にできる自然な表現だと思った。
音声になった言葉を聞くというのはほんとうに心をほぐされる感じがする。活字を追うのとは違った、人と人とのエネルギーの交流が起こるからなのだろう。
私の順番が回ってきたが、不思議と緊張感はなかった。途中で話しを忘れてしまう不安はいつもあるが、語っている間は意識が飛んでしまうこともなく、聞いてくださっている方の顔を見ながらも、私は私でお話の世界を頭に描きながら楽しんで語ることができた。お話しは聞く人をそっくりその場所からお話の世界へとお連れし、そのままその時間と空間の中をいっしょに旅し、そしてお話が終わると共にもとの場所で戻してあげなければならない。良い語りを聞いた後はまるで夢を見ているように別の次元に魂が旅していたような気持ちにさせられた。その様な場面が創れたかどうかは分らないが、少なくとも座礁しないで旅を終わらせることだけはできて感謝だった。 始めにグリム童話を、次にイギリスの小話、「豚とおばあさん」の英語版を語った後、谷川俊太郎の詩「みみをすます」を朗読した。
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