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★短編小説9 - 2003年09月25日(木)
[ 君が僕の中にいる。 ]
流川がアメリカに行って、何ヶ月か経ったある日。
俺の中で、異変が起きる。
抱き合った時。
キスをする瞬間。
喧嘩する間。
感じ取る事の出来る、流川の匂い。
もう忘れてしまった。 そう思っていたアイツの匂いが、急に俺の鼻を掠めた。
すぐに、アイツの匂いだと気が付いた自分が、嫌だった。
最初は、気のせいだと思っていた。
誰か、アイツに似た匂いのする奴が近くを通りかかったり。
そんな感じなんだろうと、
そう思っていた。
たけど、今日一日で、
何度も
何度も
アイツが近くにいるんじゃないかってくらい、
錯覚を起こすほどに、
その匂いを感じ取っていた。
もう、アイツのことなんて、忘れようと思っていた。
ただの“思い出”で、片付けてしまおうと思った。
だけど、アイツの匂いに良く似たそれを嗅ぐと、
鮮明に、
ハッキリと、
アイツとの共用した時間を思い出してしまう。
思い出したくもないと思っていたのに。
あぁ
今、気が付いた。
この匂いは、俺からしている。
流川の匂いが、俺からする。
吐き気がした。
end
BGMはDick Dale & His Deltonesの「MISIRLOU」で。
...
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