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★短編小説8 - 2003年09月24日(水)
[ 寒い日。 ]
最近、寒くして死にそうになる。 早く学ランに腕を通して、温まりたい。
移行されない夏服。 移行期間まであと3日。 それなのに、3日後は蒸し暑いという週間天気予報。
ワケの分からない気候に、うんざりしていた。
授業中。 みんな寒そうに授業を受けてる。 いつもは寝てるのに、今日は雨が降っていて、心地いい日差しが俺の身体に当たることは無かった。
だから寒くて、寝れない。 だからこうして、みんなを見ている。
夏服の袖から伸びる、震える腕。 辛そうに寒さと戦う。 教員は、そ知らぬ顔で授業を進める。 そういう奴に限って、厚着。
着てる洋服、全部脱がしてしまいたいと思った。 きっとみんな思っている。 きっとみんな。
早く部活に行きたい。 この身体を温めたい。
寒い。
寒い。
寒い。
朝も寒いけど、夜も寒い。
部活が終わって、家に帰る途中。
冷たい風の音が耳元で聞こえて。 流川の自転車の音が響く。
「さみぃーな…。」 「ああ。」
こんな話しをしていたら、尚更寒くなる。
流川の顔を見る。
いつも真っ白くて、綺麗な色をしていて。 だけど今日は、青白くなっている。
紫色の唇。 いつも以上に色が悪い。
「お前、ホントに寒そうだな。」 「あぁ、死ぬほど寒い。」
流川は眉間に皺を寄せる。
「お前、本格的に冬来たら死ぬんじゃねぇーの?」
笑いながら言った俺に、真面目に流川は答える。
「死ぬな。」
尚更笑えた。
分かれ道。
ここで流川とはさよなら。
コイツ、早く家帰らねぇーと冬来る前に死ぬぞ。 そんなバカみたいな考えが浮んで消えた。
「じゃーな。」って言う前に。
「じゃーな。」って言われる前に。
無理矢理流川のYシャツを掴んで、 色の悪い唇に、俺の冷たい唇を重ねてやった。
たったそれだけのことで、流川の唇は色を変える。
その様子がなんだか笑えて。
だけど、俺の唇も十分温かさを取り戻していた。
無償に嬉しくて、寒い事を忘れそうだ。
end
最近急激に冷え込む。 そんな日常に、温かさを。
...
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