詩のような 世界
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隣の家の奥さんが
「たまねぎーたまねぎーたまねぎーたまねぎー……!」
と10回は叫び、呪文のように耳に入ってきた
やっと涼しくなってきたかなあ
縁側に座った
わたしの範囲で空は澄んだ青をしている
ギャーギャーと鳴きながら飛んでいく鳥を目で追ったら
自然な静寂に包まれた
いつもの友が物置の裏からひょっこり顔を出す
「にゃんこ」と呼ぶと
しなやかな友は素早く走ってきて
わたしのふくらはぎに真っ白な小さい頭をぶつけてきた
オーバーリアクションで
「にゃんこ頭突きはやめてえええ」と頼んだ
友はおかまいなしにわたしの指を噛み
「痛い!にゃんこに指噛まれたああああ」
大声を上げてみると
今度は反対隣の家のおばさんが大笑いした
一瞬、穴を掘って入りたい衝動に駆られたが
わたしもたまねぎおばさんのように
小さな笑いを提供できたのだ
そう考えることにしたら、少し照れた
友のグーパンチを軽軽と避けてから
ふわふわの粉雪みたいな背中をゆっくりと撫でた
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