詩のような 世界
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日が落ちるころ
僕は海の上に立っていた
水面からわずか数センチのところ
空は
上半分が濃い藍色
下半分がオレンジ色
その境目を見極めようと
必死に目を細めてみたけれど
きれいな線ではなくて
混ざり合っていた
まるで僕のようだ
どちらも本当ではなく
どちらも嘘ではない
岸辺から
裸足の人が僕を呼んでいる
遠すぎて聞こえないけれど
僕を呼んでいることがわかる
小さすぎて顔が見えないけれど
とても大切な人だったことはわかる
消えゆくオレンジの光を背に浴びながら
両腕を横に伸ばした僕は
ゆっくりと回転し始めた
飛び散る涙は
穏やかな波が引き受けてくれる
もう戻れないんだね
もう戻れないのかな
もう
そんな呟きを繰り返しながら
僕はドリルのように
水しぶきを立てながら暗い底へと沈んでゆく
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